篠田イラリアさんはイタリア出身で、大学3年生の時に日本にやって来て日本の男性と結婚した。日本に来たきっかけは、日本の文化がイタリアの文化と違いがあるので興味深く感じたこと。大学時代から日本語と日本の文化を勉強し、ホームステイ先とは違う新座に嫁いで早11年経つ。「我慢しないで気持ちを率直に伝える」イタリア流と「気持ちを内にため込む」日本流との微妙な違いを人中で実感することがしばしばというイラリアさんから新座に住むことになった理由や日本の良さ、イタリアの良さなどについてお話を伺った。
(取材班 深澤さつき,シュウチョウ,鈴木稚菜 )
自分の家族について、笑顔で語るイラリアさん
―― 今新座に住んでいるということですが、新座に住むきっかけはなんですか。日本の中でなぜ新座を選んだのですか?
イラリアさん 私の主人(篠田さん)がお肉屋さんの長男で、新座に住んでいるからです。もともとはベネチアの大学で今の主人と知り合いました。その後、私が日本に留学しホームシティしていた板橋区の高島平から新座が近いので友達と一緒に出掛けたところ、「私の店でアルバイトを始めてみませんか?」と誘われたのです。それから2年後に主人と結婚することを決めました。今、結婚して11年になります。
―― 新座での生活やお肉屋さんのお仕事などのお話を聞かせてください。
イラリアさん 普段の日常生活だと、大体午前中は9時から11時半まで店の仕事、家に帰ったら家庭の仕事をやります。うちには4歳と6歳の子供がおり、保育園と小学校に行っています。子供達の世話と店の手伝いで一日が終わる感じです。店はカレンダー通りで休むので、大体一週間に一回、日曜日はずっと休みで家族と一緒にいられます。
―― もし休みをご主人と一緒に家族全員で取れたら、どこか日本で行きたい場所はありますか。
イラリアさん 今度の夏休みに、伊豆半島の海のそばにあるペンションを借りて子供たちを連れていきます。にぎやかな場所でなくなるべく家族でゆっくり過ごしたいというのが私の考えです。子供たちは、一日の中で忙しいお父さんと触れ合うことはあまりありません。いつも「パパ~っ」てあいさつするぐらいなので休みの時は家族で外に出かけたいです。
ご主人と経営する「肉の鳥七」
―― 日本のいいところを教えてください。
イラリアさん
イタリアでは、保育園は親が必ず迎えに行き先生の手から直接親の手へ子供が渡されます。送り迎えしないと危ないからです。保護者の名前が登録されていて、その人しか子供の引き渡しができないようになっています。イタリアと日本では安全に対する考え方に差があり、日本ほど安心して子供を遊びには行かせられません。イタリアではどんなに小さな公園、町でも目が離せないです。
私はイタリアの北部出身ですが万引きや自転車を盗まれるのは当たり前なので,私が働く新座の商店街でお客さんが自転車に買った物を置いて離れること自体がすごいと思いました。イタリアなら自分のものは必ず近くに置くようにします。財布もお尻のポケットには誰も入れません。
―― 日本人からするとイタリアはきれいな街のような気がするのですが……。
イラリアさん きれいにはされて,町なども掃除はされていますが、建物・景色・自然はとてもきれいでも、細かいところ、例えばタバコの吸い殻や噛んだガム・ゴミ・落書きが汚いです。日本にはそれがありません。日本に来た時に一番に目につきました。細かいところの景色が日本はきれいです。日本は電車もきれいで,イタリアは日本ほどきれいではないです。日本は新幹線でも終点に着くとゴミの回収、掃除がありますよね。イタリアでも掃除はしますが、しょうがないからやろう、と渋々なのです。それがイタリアでは普通の感覚です。
―― イタリアのお店と日本のお店の差は感じますか。
イラリアさん
日本ではお客様は神様で、お客さんを店員が大事にしていますし、ムッとすることがあっても笑顔を繕っていますね。イタリア人は気持ちが先に出てしまい、郵便局でも市役所でもお客の側が失敗したら「気をつけなさい」と注意されます。日本人は気持ちを抑えてため込むと思います。私は自分の子供には小さいころから「言いたいことは我慢しないでちゃんと言いなさい。」と言っています。
日本人と付き合うことは外国人としてたまに難しく感じます。外国人としてどこまで近づいていいか、どこまで言ってしまっても相手(日本人)が傷つかないか、驚かないかが分からないので……。しかし、日本の文化や相手の人柄を知っていくうちに「これは言わないでおこう」というケースが増えました。
―― 最後に,イタリアの良さを教えてください。
イラリアさん 私の出身地も観光地なのですが,自然豊かでとてもきれいです。あとは町の建物が古いので壁をきれいにするのも大変ですが,町の景観を壊さないようにしています。ベネチアに比べて東京はごちゃごちゃして全然建物の表と裏が分からないと思いました。
日本について自分の体験を伝える
故郷の紹介を聞く取材班
インタビューを終えて
◇いろいろ話を聞き、留学生の私にとって、深い共感を抱きました。以前は気付かなかった日本とイタリアの違いも勉強しました。(シュウチョウ)
◇日本は子育てするにはとても安全で良い環境であると知りました。あらためて日本は良い国だと認識しました。(鈴木稚菜)
◇これまで外国はきれいでうらやましい、とばかり思っていましたが、外国の方の目線から、逆に日本のいいところをもっと良くしていったらいいということに気付くことができました。(深澤さつき)