世界70カ国を回った国際親善家の願いは
「多文化を知ること」

―新座市国際交流協会の草分け 櫻博子副会長(日本)

 櫻博子さんは1999年新座市国際交流協会発足時当初からのメンバーで現在副会長を務める。「世界で行ったことのない国は、もうないほどです」と指を折り、取材する私たち学生に「ぜひ、若いうちに海外経験をしてください」と通りすがりの旅行者とは違う観点から多文化を吸収することを勧めた。NPO法人 日本ガラパゴスの会(理事)、埼玉県地球温暖化防止活動推進員、環境教育支援ネットワーク きづき等、幅広い社会活動も、新座の国際交流推進というライフワークの延長線上にあった。このインタビューに登場していただいた新座在住の海外の方のほとんどが櫻さんの紹介であり、その忙しい日々から新座をグローカル社会に育て上げてきた行動派櫻さんの情熱が伝わってきた。

(取材班 渡辺栞 ショウギョウカ 鈴木杏里紗 水戸部夏実)

1984年に結婚して新座市に住む。結婚前は大学病院の医局秘書として国際会議にも参画し、今日まで国際交流の活動を続けている。

撮影者 ショウギョウカ

日本から世界へ、世界から日本へ。新座を起点に国際交流

―― 櫻副会長は、地域発の国際交流組織のリーダーとして、新座を起点にグローカル社会づくりを推進してこられましたが、新座市は国際交流の輪が広がりやすい土地柄ですか。

櫻さん  新座は文化人が多いですよ。手頃な通勤距離で、東京に近く、音楽家や大学教授が多いです。外国人も多いためそこから国際交流が始まりました。正直、新座は今では都会化しましたが、昔は畑しかないようなところでした。住んでいる人は前から新座に住んでいるような人と東京に働きに出て新座には寝に帰るだけのいわゆる埼玉都民のような人とがいますね。でも、そういう新旧入り混じるオープンな土地柄だけに国際交流も進めやすかった気がしています。

―― 櫻さんは国際交流協会発足時からのメンバーだとお聞きしました。協会立ち上げ当時の様子をお聞かせください。

櫻さん  国際交流協会発足は今から16年前の1999年です。その時私はPTA保護者会連合会の役員をやっていたのです。発足の際は、PTAのつながりを出発点にして、新座市長はじめ各団体の代表の人たちや市民に声を掛け、外国から来て新座に住んでいる方々との交流が始まったわけです。


ご登場いただいた方々


イラリアさん

櫻さん

ジャニーンさん

シュレスタさん

シーラ先生

パパッソンさん

マシューさん

リタさん

編集後記


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「グローカル」って何だろう

新座という地元(ローカル)と、そこに根を下ろし生活する外国人(グローバル)との出会いからどのような物語が生まれるのか。

本学の日本人学生と留学生が外国人、さらに国際交流を支える日本人へのインタビューを通しグローカルの真の意味を理解しようと努めた記録である。

(2016年前期総合科目「にいざ十文字発世界へ!」)

訪れた国について語る櫻さん

撮影者 ショウギョウカ

―― PTAと国際交流活動はどのように結びついたのですか。

櫻さん  きっかけは子供が小学校に入った時に子供のクラスに外国人の子がいて、その外国人の子の親御さんは日本の言葉が通じませんでした。だから小学校の連絡網を回す時に私の後にその方を最後にしてもらっていたということがありました。私が連絡網の日本語の下に英語訳をつけて親御さんに渡していたのです。その時、私に何かできることはないかと感じたことがきっかけです。
 私は結婚して新座に来る前は大学病院の医局の秘書をやっていました。海外の救命救急医を受け入れたりする業務もしていて独身の時から外国人との関わりはよくありました。そういう点も国際交流活動に自然と関わる気持ちになった理由かもしれません 。

―― 新座での国際交流の活動を通して、楽しかったことや苦労したことを教えてください。

櫻さん  楽しかったことは初めて色々なイベントをしたときに全く知らない新座在住の外国の人たちが参加してくれたことです。私は独身の時から海外に出かけることが多く色々な国に友達がいますが、新座のイベントで偶然に会った人が私の知り合いと友達同士だったりして、とても楽しかったですね。また新座での国際交流を通して、色々な国の料理を紹介してもらったので自分のテーブルメニューが増えたことです。
 これまでに辛かったことは国と国の間のデリケートな関係で外国人同士が隣に座れないことがあったことです。人間同士でお付き合いをしたいのに自分ではどうしようもない国際情勢ゆえに悩まなければいけないというところに心が痛みました。

地域ボランティアは海外でお世話になった方々へ御恩返し

―― 新座での現在の櫻副会長の主な活動を教えてください。

櫻さん  新座市役所のコミュニティ推進課では青少年の海外派遣や国際交流協会の事務局など、対外的なことを行っています。新座市は海外にも友好都市が3市あります。青少年の海外派遣先はドイツとフィンランドです。昔の東ドイツのブランデンブルグ州です。この3市との交流のお手伝いや国際交流デーを開催したり,新座市に住む外国人との交流をしています。お手伝いをする気持ちになったのは、自分が外国に行った時にいろんな方にお世話になったからです。自分の経験から、外国の人が日本に来ると分からないことがいろいろあるはずです。そんな時、何か役に立つことがあったら協力してあげようと思ったのです。

―― 具体的に、櫻副会長が訪れた国を教えてください。

櫻さん  行ってない国のほうが少ないかもしれないです(笑い)。アメリカ、カナダ、コロンビア、ブラジル、韓国、中国、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、パキスタン、イラン、アルジェリア、ガーナ、カメルーン、ソマリア、イスラエル、トルコ、ギリシャ、チェコ、スイス、イタリア、オーストリア、ドイツ、ポーランド、ロシア、フランス、ポルトガル、フィリピン、インドネシア、マレーシア、モンゴル、タヒチ、パラオ、オーストラリアなど……約70カ国ほどは行ってるんじゃないでしょうか。

―― 若者の世代にこれからの国際交流に関して、アドバイスをお願いします。

櫻さん  私が生きてきた中で一番やりたくてできなかったことはもっと多文化を知ることです。仕事のために海外に行くのではなくてそこで何カ月か住んでみて文化を勉強したり、そこの地域の人たちと生活してみて感性を学んだりすることは若いうちじゃないとできないことも多いと思います。だから、ぜひみなさんにも海外に行くことがあったら「これはチャンスだ」と思って出かけてください。そしていろいろな事をたくさん吸収してほしいですね。


NIFA2014 春祭り


2015 大江戸祭りで


ガラパゴスで植林




インタビューを終えて
◇櫻さんにインタビューしてみて、様々な国の魅力を聞けたり、国際化の現代についても知ることができ参考になりました。(渡辺栞)

◇いろいろ勉強になりました。いろんな所に行きたくなりました。いろんな世界を見に行きたくなります。(ショウギョウカ)

◇日本は徐々にグローバル化し外国人との交流が多くなるので、より多文化を知り学ぶ事が大切だと感じました。(鈴木杏里紗)

◇取材を通して現在の若者には、国際交流の必要性が大切だと感じた。今でしかできないことをやろうと思います。(水戸部夏実)