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メンタル・アカウンティングmental accounting

どうせあぶく銭

たとえば…
競馬で大穴を当てた。よし今夜はパーッと使おう。

考えてみよう

(1) 次のような状況を想像してください。

あなたは演劇を見ようと思い、5,000円のチケットを購入して劇場に出かけました。ところが劇場に入ろうとした時、あなたは持っていたチケットをどこかで落としたことに気がつきました。チケットを購入した座席がどこだったかはわからないし、チケットを取り戻すこともできません。あなたは新たに5,000円を払って、チケットを買い直しますか。

(2) 別の状況を想像してみましょう。

あなたは演劇を見ようと思い、劇場に出かけました。窓口で5,000円のチケットを購入しようとしたところ、あなたはポケットに入れていた5,000円札をどこかで落としたことに気がつきました。あなたは新たに5,000円を払って、チケットを買いますか。

Kahneman & Tversky (1984)を一部改変

解説

例題に示したのとほとんど同じ問題をそれぞれ200名ほどに出したカーネマンとトヴェルスキーの研究では、(1)の状況でチケットを買うと答えた人は46%だったのに対し、(2)の状況でチケットを買うと答えた人は88%でした。よく読めば、いずれの状況も5,000円の価値があるものを失ったという事実には違いがありません。にもかかわらず、チケットを買う人の割合に大きな違いが見られたのは、私たちが心の家計簿のようなものを持っていて、収支はその費目に基づいて計算されているためだと考えられます。たとえば、チケット代が「娯楽費」のような費目に振り分けられているとすれば、(1)の状況のようにチケットそのものをなくした場合は、娯楽費における支出として計算されます。そのため、チケットを買い直して、さらに娯楽費の支出を増やすことにはためらいが生じます。一方、(2)の状況のように現金をなくした場合、現金はまだ娯楽費として紐づいていないため、その時点での娯楽費の支出はゼロです。したがって、当初の予定どおりに娯楽費から5,000円を支出することには、抵抗が少ないのだと考えられます。

このように、私たちの心理会計(メンタル・アカウンティング)は、自らが設定した狭い枠組み(家計簿の費目)の中での損得勘定だと考えられます。ギャンブルなどで思いがけず手に入れたお金が生活費に充てられることなく、無駄に消費されるのも、生活費とは別の費目として、収支の計算がなされるためだと解釈できます。

関連記事:サンクコスト効果フレーミング効果

【参考文献】
Thaler, R. H. (2008). Mental accounting and consumer choice. Marketing Science, 27(1), 15-25.
Kahneman, D. and Tversky, A. (1984). Choices, values, and frames, American Psychologist, 39, 341-350.
カーネマン, D.  村井章子(訳)(2014). ファスト&スロー(下) 早川書房

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