部分手がかり効果part-list cueing effect
ヒントがあるのも善し悪し
- たとえば…
- いくつか買い物を頼まれた。聞き慣れないローリエは買い物に行く前に「調味料のところにあるよ」と言われ無事に買えたが、あれっ? 他は何を頼まれたんだっけ?
まず、参加者全員に15個の単語リストを覚えてもらいます。次に思い出してもらう際に、半分の参加者には思い出すための手がかりとして、15個のうち5個の単語に関連するカテゴリー(例えば「電車」という単語に対して「乗り物」)を提示します。残りの参加者には思い出すための手がかりは提示しません。
さて、どちらの参加者にも手がかりが提示されなかった10個の単語ついて、思い出せた数が多かったのは、下記のどちらだと思いますか。
- 5個の単語について手がかりが提示された参加者
- なにも手がかりが提示されなかった参加者
何かを思い出そうとするとき、例えば、それに関連するカテゴリーなどがヒント=手がかりとして提示されると思い出しやすくなります。これは記憶の促進効果として知られています。一方で、例題のように、部分的な手がかりが提示された場合、提示されたものに対する記憶は促進されますが、そのことによって逆にその他に覚えたことが思い出せなくなる、つまりその他の記憶は抑制されてしまうことが報告されています。覚えたことを思い出す再生課題では、部分的な手がかりが無いほうが、ある場合よりも再生成績がよくなることがあるということです。この現象は部分的な手がかり効果と呼ばれ、語彙やエピソードなどさまざまな記憶に関して検証されています。また、先行研究の中には、こうした部分的な手がかりの影響は持続するという報告もあります。
【参考文献】
Brown, A.S. & L.A. Hall (1979). Part-List Cuing Inhibition in Semantic Memory Structures. American Journal of Psychology, 92, 351-362.
Aslan, A., Bäuml, K.-H., & Grundgeiger, T. (2007). The role of inhibitory processes in part-list cuing. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 33(2), 335–341.