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権威バイアスauthority bias

箔づけ

たとえば…
大学の偉い先生が言うのなら間違いない。

考えてみよう

次に示すのは、実際に行われたある心理学の実験の概略です。実験に参加したつもりになって想像をしてみてください。

あなたは二人一組で実施する大学の心理学の実験に参加しました。参加者は先生役と生徒役に分かれることになっており、くじをひいた結果、あなたは先生役を務めることになりました。実験者(この実験の責任者)の説明によると、先生役は生徒役に記憶の問題を出し、もし答えを間違えたら、罰として電気ショックを与えるのだそうです。

実験が始まると、生徒役は何度も答えを間違えます。先生役であるあなたは、そのたびに電気ショックを与えなければなりませんが、電気ショックの強度は全部で30段階あり、生徒役が答えを間違えるたびに、一段階上の電気ショックを与えることになっています。電気ショックの強度が上がるにしたがい、生徒役の苦痛を訴える声は切実になってきました。しかしあなたのそばにいる実験者は、先生役であるあなたに電気ショックを与え続けるよう指示をしてきます。

さてこのような状況で、あなたなら、実験者の指示に従い、生徒役に対して最後まで電気ショックを与え続けますか。また実際の実験に参加した40名のうち、最後まで電気ショックを与え続けた人は何人くらいいたと思いますか。

解説

例題に示したのは、ミルグラムが行った「権威への服従」と呼ばれる実験の概略です。おそらく多くの人は、自分ならば早々に電気ショックを与えることを止めると答えたことでしょう。しかしミルグラムが報告した典型的な実験では、40名中25名(62.5%)もの参加者が、実験者の求めに応じて、電気ショックを最後まで与え続け、生徒役を生命の危機に陥れました(生徒役は、苦しんでいる演技をするように頼まれていたサクラだったため、実際には、電気ショックを受けていませんでした)。実験に参加したのは、その街に住むごく普通の人たちでした。

このような極端な状況を、私たちが日常生活で経験することはないでしょう。しかし権威がある者からの命令や説得を、内容をよく吟味しないままに受け入れてしまう例は、日常生活のなかに溢れています。たとえば偉い先生が勧めていると聞いて、医薬品や生活用品を購入したことはないでしょうか。

権威には相応の根拠がある場合もありますが、実体がない単なるシンボルにも私たちは反応します。たとえば、俳優が医者のシンボルである白衣を着ると、それだけで立派なお医者さんに見えたり、嘘の肩書であっても、たくさんの肩書が書き連ねた名刺を出されると、すごい人なのだと勘違いをして、騙されてしまうこともあります。

【参考文献】
ミルグラム, S. 山形浩生(訳) (2012). 服従の心理 河出文庫
チャルディーニ, R. B. 社会行動研究会(訳) (2014). 影響力の武器[第三版]:なぜ、人は動かされるのか 誠信書房

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