回帰の誤謬regressive bias
絶好調も、スランプも、長くは続かない
- たとえば…
- ある試験で点数が前回よりもアップして喜んでいたら、次のテストでは元の点数に戻ってがっかりした。
1年目に大活躍をしたスポーツ選手が、2年目は成績が振るわないことを「2年目のジンクス」と言いますが、なぜそのようなことが起きるのでしょうか。あなたの考えを聞かせてください。
( ) から
例題のような現象を見かけると、その選手の身体や精神面に何か問題が生じたのではないかと考えてしまうかもしれません。もちろん、そうした側面が関与していることもあるかもしれませんが、単なる統計学的な回帰*(平均方向への回帰)で説明できることも多くあります。回帰現象で説明できることに対して、複雑な因果関係を想定したり説明したりすることを回帰の誤謬と言います。
*回帰とは、一般にもとの状態に戻ることを指します。
例えば、例題とは逆のパターンで、ある野球チームの成績が数年間ずっと低迷していて最下位から急に優勝した場合、新しい監督の指導が効を奏したなどと考える人がいるかもしれません。実は、それは平均への回帰で、たまたま監督が代った年に偶然に優勝が重なっただけだとしても、人はいろいろな意味づけや解釈をすることがあります。そうした意味づけや解釈は、ときに間違った信念形成につながることもあります。
原因を推測する際には、偶然だけでなく、自然成長などの可能性が隠れていないか、多角的に要因を探ってみることが必要です。
【参考文献】
カーネマン, D. 村井章子(訳)(2014). ファスト&スロー(上) 早川書房
ゼックミスタ, E. B., & ジョンソン, J. E. 宮本博章・他(訳)(1996). クリティカルシンキング入門編 北大路書房