身元のわかる犠牲者効果identifiable victim effect
この子を助けたい
- たとえば…
- 昔、自分が訪れた「あの」旅館が災害の犠牲に…。何か私にできることはないだろうか?
あなたは、ある難病で苦しんでいる子どもがいることをニュースで知りました。その難病を根治する治療法が最近開発されましたが、その治療には保険がきかず、治療には3500万円が必要です。この治療を行う以外にこの病気のこどもの命を救う方法はありません。あなたは、この子どもを救うために、自分のお金を寄付してもよいと思いますか?
- 寄付してもよい
- 寄付する気はない
Kogut, & Ritov (2005)を参考に作成
先ほどの質問に対して、あなたはどのように答えましたか?
病気の子どもについての詳しい情報が何も示されない場合、私たちはその子どものために積極的に寄付しようという気持ちにはあまりならないようです。これは、「この難病で苦しんでいる子どもが全国に500人います」といった統計的な数値を示して、寄付を募った場合も同じです。
しかし、「この難病で苦しんでいる子どもは翔太くんという名前で、まだ2歳になったばかりです」という個人情報を聞かされ、翔太くんが元気に笑っている写真を見せられたらどうでしょうか。この場合、寄付額が増加します。私たちは、助けを求めている人の個人情報が示されたときに、その人を助けたいという気持ちをより強く持つようです。
このように、誰だかわからない人の危機よりも、誰だかわかっている人の危機に対して、より強く反応する傾向を、身元のわかる(顔のわかる)犠牲者効果と言います。
【参考文献】
Kogut, T., & Ritov, I. (2005). The "Identified victim" effect: An identified group, or just a single individual? Journal of Behavioral Decision Making , 18, 157–167.