区別バイアスdistinction bias
この差は大きい?
- たとえば…
- お店でハンバーグを注文しようと思ったら、「A4ランク和牛ハンバーグ」と「A5ランク特選和牛ハンバーグ」があった。やっぱりA5ランクの方がずっとおいしいんだろうなと思って、A5ランクの方を注文した。
あなたが買い物をしたとき、キャンペーン中につき、購入金額の一部がキャッシュバックされると告げられました。キャッシュバックの割合について、(1)のように言われたときと、(2)のように言われたときで、あなたの幸福度はそれぞれどの程度になると予想しますか。
☆の数で答えてください(☆の数が多いほど、幸福度が高いとします)。
(1) 購入金額の5%がキャッシュバックされます(最大10,000円まで)
(2) 購入金額の10%がキャッシュバックされます(最大10,000円まで)
(1)のように言われたときの幸福度
☆ ( ) 個分
(2)のように言われたときの幸福度
☆ ( ) 個分
例題(1)と(2)に対して、あなたはどのように予想しましたか?
ここでの例題のように(1)と(2)の条件を同時に見せられると、多くの人が、(2)のように言われたときの方が(1)のように言われたときよりも、幸福度が高いだろうと予想します(例えば、(1)の5%キャッシュバックの幸福度が☆2つで、(2)の10%キャッシュバックの幸福度が☆4つ)。しかし、(1)と(2)の条件を別々に見せられた場合、幸福度の予想に見られる差は、先ほどより小さくなるようです(例えば、(1)の5%キャッシュバックの幸福度が☆2つで、(2)の10%キャッシュバックの幸福度が☆3つ)。
このように、金額や割合などの特定の数値に基づいて、複数の条件の価値を比べることは、日常場面でもよく見られます。しかし、このようなとき、複数の条件の価値を別々に評価するよりも、同時に評価したときの方が、その数値の違いが自分にもたらすであろう幸福度(価値)の差異をより大きく捉えやすいことが明らかになっています。このような判断の歪みを区別バイアスと言います。
私たちは何かを選ぶとき、複数の候補の数値を直接比較することで、より妥当な判断が可能になると思いがちです。しかし、このようなやり方をした場合、私たちの判断は区別バイアスの影響をむしろ受けやすくなります。「こちら方が数値が大きいのだから、感じる幸せも当然大きくなるはず」という幸福度予想は、必ずしも現実に得られる幸福度とは一致しないかもしれません。
【参考文献】
Hsee, C. K. & Zhang, J. (2004). Distinction bias: Misprediction and mischoice due to joint evaluation. Journal of Personality and Social Psychology, 86, 680-695.