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代表性ヒューリスティックrepresentative heuristic

それが一番、もっともらしい

たとえば…
しばらく会っていない友だちのことを夢に見た翌日、その友だちから連絡があった。思うに、これって、「偶然」ではなく、「予知夢」だよね?

考えてみよう

下記の2名の人物のプロフィールを読んで、各問について考えてください。

(1) トムは大学生で成績優秀ですが、創造性に欠けます。彼の書く文章は、想像力が発揮されることもありますが、単調で機械的です。秩序や明晰さを好み、日頃から常に有能でありたいと思っています。他人のことにあまり関心がなく、同情心は薄いようにみえます。社交的なほうではありません。自己中心的ではありますが、倫理観はしっかりしています。
さて、彼が大学で専攻しているのは、下記(A)、(B)、(C)のなかでどれだと思いますか?
可能性が高いと思うほうから順に、順位をつけてください。

  • 教育
  • 経営
  • コンピュータサイエンス

(2) リンダは31歳、独身で、積極的に発言する非常に聡明な人です。大学では哲学を専攻し、学生時代には差別や社会正義の問題に関心を持っていました。また、反核デモに参加していました。
現在のリンダについて推測する場合、(A)と(B)のどちらの可能性が高いと思いますか?

  • リンダは銀行員である。
  • リンダは銀行員で、フェミニスト運動もしている。

(1)は、Kahneman & Tversky (1973)より一部改変
(2)は、Tversky & Kahneman (1983)より一部改変

解説

私たちは、論理的なプロセスを経ずに、直観的あるいは簡便的にものごとを判断することがあります。この方法はヒューリスティックと呼ばれ、短時間で結論に至るというメリットがあります。ただし、必ずしも正解や最適解に達するとは限りません。ヒューリスティックのなかでも、ある事象が、典型例とどの程度、似ているかや、当該のカテゴリーの代表的な特徴をどの程度、備えているかといったことをもとにして、その事象の生起頻度や生起確率を判断する方法は、代表性ヒューリスティックと呼ばれています。

例題(1)であなたがつけた順位は、(C)、(B)、(A)の順ではなかったでしょうか。

また、例題(2)では(B)を選んだのではないでしょうか。改めて、(2)の選択肢を見てみると、数学の「集合」関係にあり、確率としては(A)のほうが高いのですが、特徴が明示された(B)を選択する人多いことが分かっています。また、この問いに限らず、似たような実験をすると、同じ結果が得られます。つまり、もっともらしさ(代表性)によるバイアスが生じたといえます。この例題(2)のタイプの錯覚を、特に連言錯誤と呼びます。

ところで、ヒューリスティックという語は、古代ギリシア語の「発見する」を意味する語(「アルキメデスの原理」を思いついたアルキメデスが叫んだとされる「エウレカ(発見した)!」は、その活用形)に起源があり、「発見法」という訳語を用いることがあります。論理的に厳密で必ず正解にたどりつく思考プロセス「アルゴリズム」と対置することがあります。

関連記事:連語錯誤

【参考文献】
Kahneman, D., & Tversky, A. (1973). On the psychology of prediction. Psychological Review, 80, 237-251.
Tversky, A., & Kahneman, D. (1983). Extensional versus intuitive reasoning: The conjunction fallacy in probability judgment. Psychological Review, 90, 293-315.
カーネマン, D.  村井章子(訳)(2014). ファスト&スロー(上) 早川書房
ゼックミスタ, E. B., & ジョンソン, J. E. 宮本博章・他(訳)(1996). クリティカルシンキング入門編 北大路書房

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