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妥当性の錯覚illusion of validity

予測に自信あり

たとえば…
今日で今年の採用面接は終わった。積極的な学生が多かったので、入社後も活躍するに違いない。

考えてみよう

あなたは、あるコンサルタント会社で働いています。ある日、S大学の学生の来年度のGPA(成績評価平均)をできるだけ正確に予測して欲しいと頼まれました。予測を行うために、2種類の知能テスト得点を分析に用いることができます。自分の予測に自信が持てそうなのは、どの場合でしょうか。あなたの考えに近いものを選んでください。

  • 関連がある2種類の知能テスト得点を分析に使う場合
  • 関連がほとんどない2種類の知能テスト得点を分析に使う場合
  • どちらの場合も変わらない

Kahneman & Tversky (1973) を一部改変

解説

あなたは(A)~(C)のどれを選びましたか?私たちは一般的に、(A)のときに自分の予測により自信を持ちがちですが、実際には(B)の方が予測はより正確になります。なぜこのようなズレが生じるのでしょうか。

例題に関して言えば、(B)のように関連がほとんどない2種類の知能テスト得点を分析に使った方が、予測は当たりやすいことが数学的には期待されます。2種類の知能テストの内容に重なりが少ないほど、多様な情報を用いた予測が可能になり、予測が実際に当たる確率も上がると考えられるからです。一方、(A)のように2種類の知能テストの内容が互いに関連していると、2つの知能テストの得点の見た目の一致率は高くなります。例えば、片方のテスト得点が高い人は、もう片方のテスト得点も同じように高くなりがちです。そして、2種類のテスト得点の見た目の一致率が高いと、それらの得点を使ったGPAの予想結果もより確実であるという錯覚が主観的には生じやすくなります。そのため、予測が実際に当たる確率は(B)の方が高いにも関わらず、予想者の自信は(A)の方が高いという逆転現象が生じるのです。

このように、実際に予測が当たる確率と、予想者が「当たっている」と感じる確率は、必ずしも一致していません。そのため、自分ではうまく予想できたように思っても、実際には予測通りになっていないことが、現実場面ではよく起こります。例えば、採用面接の場で得られた限定的な情報から、入社後の社員のパフォーマンスを予測することは実際には難しいのですが、複数の面接官の評価が一致していると、「この面接システムは妥当であり、入社後のパフォーマンスを正確に予測できるだろう」という過度の自信が生まれがちです。

このように、実際にはそれほど当てにならない自分の予測に対して、過度の自信を持つことを、妥当性の錯覚と呼びます。この過度の自信は、自分の予測がほとんど当たらないことが過去の事例からわかっている場合にも、変わらずに維持されます。

【参考文献】
Kahneman, D., & Tversky, A. (1973). On the psychology of prediction, Psychological Review, 80, 237-251.
カーネマン, D.  村井章子(訳)(2014). ファスト&スロー(上) 早川書房

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