選択肢過多効果choice overload effect
過ぎたるは及ばざるが如し
- たとえば…
- 色違いのTシャツがたくさんあると、どの色を選べばいいかがわからなくなってしまう。
ジャムがよく売れるのはどちらの店でしょうか。
- 6種類のジャムを揃えている店
- 24種類のジャムを揃えている店
たくさんの品揃えがあるお店はわくわくするものです。しかしアイエンガーとレッパーの研究によれば、多すぎる選択肢は、消費者の購買行動にむしろ抑制をかける可能性があるようです。彼女たちは実際のスーパーに試食コーナーを設け、6種類のジャムを用意した場合と、24種類のジャムを用意した場合を比べました。その結果、試食コーナーに立ち止まった客の割合は、6種類が40.0%、24種類が59.9%となり、選択肢が多いほど消費者を引き付けることがわかりました。しかしその反面、商品を購入した客は、6種類の場合は29.8%だったのに対し、24種類の場合はわずか2.8%でした。その後の研究では、購買後の満足度も、選択肢が多い場合の方が低くなることが明らかにされています。
多すぎる選択肢が実際の購買につながらないのは、選択肢があまりに多いと、その中から1つを決定するのに時間と労力がかかり、それがストレスになるためだと考えられています。また数多くの選択肢の中から1つを選ぶという行為は、想像の世界のなかでの後悔を引き起こし(たとえば、「もしこれを選ばなかったらどうなるか」「もし別の商品を選んでいたらどうなっていたか」など)、それが購買意欲を妨げるとも考えられています。
ただし、選択肢が多いことが常に悪いわけではありません。これまでの研究の傾向を見ると、選択肢過多効果が顕著になるのは、難しい選択を迫られる場面だったり、自分の好みが明確でないものについて選択したりする場合のようです。逆にいえば、好みがはっきりしていて、選択に十分な時間や労力がかけられるようなときには、選択肢が多いのも悪いことではないのかもしれません。
【参考文献】
アイエンガー, S. 櫻井祐子(訳)(2010). 選択の科学 文藝春秋
Iyengar, S. S., & Lepper, M. R. (2000). When choice is demotivating: Can one desire too much of a good thing? Journal of Personality and Social Psychology, 79(6), 995-1006.
Chernev, A., Böckenholt, U., & Goodman, J. (2015). Choice overload: A conceptual review and meta-analysis. Journal of Consumer Psychology, 25(2), 333-358.