希少性バイアスscarcity bias
少ないものほど魅力的
- たとえば…
- 「品切れ」「期間限定」「地域限定」「最後の1点」などと言われると、無性にほしくなる。
新しくできた洋菓子店に行ったところ、そのお店には、あなたが好きなチョコレート味のケーキが2種類あるようでした。そのうちの1種類はまだたくさんありましたが、もう1種類は残りわずかになっていました。
あなたならどちらのケーキを買いたいですか。AかBのどちらかを選んでください。
- たくさんあるチョコレートケーキ
- 残りわずかなチョコレートケーキ
あなたは(A)と(B)のどれを選びましたか?
このような場合、(B)のように「残りわずかなケーキ」を選ぶことが多いようです。なお、例題のように異なる種類のケーキではなく、全く同じ種類のケーキで比較した場合でも、数が少ないときの方が、多いときよりも選ばれやすくなります。数が少ないといういうだけで、内容に関わらず、その商品の魅力が増すようです。
このように、ある商品の希少性が高く、手に入りにくい状況だと、その商品の主観的な価値が増す現象を、希少性バイアスと言います。希少性を強く印象付けるためには、「数量の制限(残り〇台限り)」や、「時間の制限(〇日で販売終了)」を設けることや、「その商品の入手を禁じること(会員以外は購入不可)」などが有効です。また、その商品を欲しがっているライバルがいると思わせることも効果的です。
このような希少性バイアスが生じる理由としては、「あるものがなかなか手に入りにくいのは、そのもの自体に価値があるからだ」と私たちが素朴に考えがちな点が挙げられます(「このケーキはおいしいから、すぐ売り切れてしまうのだろう」)。また、希少性が高く、手に入りにくいものに対しては、心理的リアクタンスが生じやすいことも関係しています(「売り切れたと言われると、もう二度と購入できない気がして、余計に欲しくなる」)。私たちは、手に入りにくい商品を見ると、自分の選択の自由が制限された感じ、失われた自由を回復するために、その商品を何としても手に入れたいと思うようです。
関連記事:心理的リアクタンス
【参考文献】
チャルディーニ, R. B. 社会行動研究会(訳)(2014). 影響力の武器[第三版] 誠信書房
Worchel, S., Lee, J., & Adewole, A. (1975). Effects of supply and demand on ratings of object value. Journal of Personality and Social Psychology, 32, 906-914.