皮肉なリバウンド効果paradoxical effects of thought suppression
忘れようとすればするほど
- たとえば…
- 「彼女のことは考えるな、今は勉強に集中しろ」と言われたけれど、かえって彼女のことが気になってしまい、ふと気づくとまた彼女のことを考えていた。
シロクマのことを思い出して話してもらう実験では、次のAとBどちらの参加者のほうがシロクマのことを話した人が多かったでしょうか。
- シロクマについて5分間考えるように教示したのち、思いついたことをすべて報告してもらう場合
- シロクマについて5分間は考えないように教示したのち、思いついたことをすべて報告してもらう場合
Wegner, Schneider, CArter, & White (1987)より一部改変
例題ではAとBどちらを選択しましたか。先行研究では、Bの参加者ほうがAの参加者よりも報告のなかにシロクマに関することが多く出てきました。
私たちは、あることを思い出さないようにすればするほど、かえってそれを意識して思い出してしまうことがあります。また考えないようにすればするほど、かえってそのことを考えてしまうということがあります。つまり、あることに対して「思考抑制」がなされると、皮肉なことにむしろそのことで頭がいっぱいになってしまうことがあります。この現象は「皮肉なリバウンド効果」と呼ばれています。また例題のようなシロクマを扱った実験が有名になったことから「シロクマ効果」とも呼ばれることがあります。
また、実際の実験では、Bの参加者は、シロクマのことを考えないよう指示された5分の間に、もしシロクマのことを考えてしまったときはベルを鳴らすように指示されたところ、ベルが何度も鳴らされました。このことからも思考抑制がいかに難しいかがわかります。
【参考文献】
Wegner, D. M., Schneider, D. J., Carter, S. R., & White, T. L. (1987). Paradoxical effects of thought suppression. Journal of Personality and Social Psychology, 53, 5–13.
Wegner, D. M., & Zanakos, S. (1994). Chronic thought suppression. Journal of Personality, 62, 615–640.