システム正当化system justification
悪法もまた法なり
- たとえば…
- 私がお金持ちになれないのは、それに見合うだけの能力や努力が不足しているからだ。
あなたは、正社員として働いているとします。朝、ニュースを見ていると、失業中でなかなか正社員の職につけない人のインタビューが流れました。
(1) この人が正社員の仕事につけない理由は何だと思いますか。あなたの考えに近い方を選んでください。
- 能力や仕事探しの努力が足りないせい
- 社会の構造に問題があるせい
(2) では、あなたが正社員の仕事につけない場合には、どのように考えるでしょうか。
- 能力や仕事探しの努力が足りないせい
- 社会の構造に問題があるせい
例題(1)は「被害者非難」の項目で出した例題と同じです。このような場合、高い地位や有利な立場にいる人が選択肢Aを選び、現状の社会システムを肯定することに不思議はないでしょう。ところが例題(2)のように、低い地位や不利な立場に置かれている人自身も選択肢Aを選び、不公平な社会システムの維持・正当化に一役買っているとする理論があります。
このシステム正当化と呼ばれる理論によれば、現在のような社会的な序列や役割が、いまこの世界に実際に存在するという事実そのものが、制度的な差別の存在を妥当で自然なものだとみなす根拠になります。人は不安定で無秩序な状態を嫌うがゆえに、誰もが適材適所に配置されていると信じ、自分の地位や立場も分相応なものだと考えてしまうのです。
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【参考文献】
Jost, J. T., & Banaji, M. R. (1994). The role of stereotyping in system-justification and the production of false consciousness. British Journal of Social Psychology, 33(1), 1-27.
Jost, J. T., & Hunyady, O. (2005). Antecedents and consequences of system-justifying ideologies. Current Directions in Psychological Science, 14(5), 260-265.