フィンランド出身の永原リタさん(64)は、20代前半のころから様々な国を旅行し、インドで日本人のご主人と出会った。結婚を機に30年ほど前に来日し、すっかり日本に溶け込んだ生活を送っている。インドネシアで身に付けた「ろうけつ染め(バティック)」の技術を生かし創作活動に励み、今では個展も開くほどの腕前だ。西東京市にある工房にリタさんを訪ねた。
(取材班 大沼美沙子、栗原華織、ソウ ジュ、山下茉衣子)
自宅近くの工房で話を聞いた永原リタさん
―― お仕事はどのようなことをしていますか。
リタさん 自宅からすぐそばにある工房で毎日、バティックの仕事をしています。ほかにも英語を教えたり、ツアーガイド(北欧から来た人に向けて)をするなどたくさんの仕事をしています。でも私の生きがいはバティック。ちょっとした時間があれば工房に行き、作品を作っています。
―― 日本に来て1番良かったことは何ですか。
リタさん 家族ができたことです。また、いろんな所に行ったり、いろんな人に会うのが好きです。日本人だけでなく、たくさんの人といろんな勉強をするのが大好きです。自分が全く知らない所に行くのは怖くなく、逆に好奇心がわくので一人で何かをするのも平気です。人と会うのが好きだから、ガイドの仕事もできるようになりました。
―― 困った体験はありますか。
リタさん
日本語が難しかったことですね。漢字が全部線に見えてしまうので、理解するのが大変でした。今はもう、日本人と同じ生活をやっているから慣れましたが、最初は大変でした。日本語の「さよなら」と「ありがとう」しか知らなかったし、日本のことも分からないことだらけでした。だから一生懸命に勉強しました。
これまでの経験を丁寧に説明したいただいた
―― 母国の魅力、文化の違いは何ですか
リタさん 国国民性がシャイなのは似ています。お酒が入ると陽気になり、打ち解けやすくなります。フィンランドはサウナのイメージが強いと思いますが、日本とフィンランドは全く違います。日本のサウナはとても暑く、息苦しいのですが、フィンランドはスチームが大半で、息苦しくありません。シラカバの新芽で仰ぎますが、このシラカバは冷凍保存しておいてクリスマスなど特別な日に使います。夏になると白夜という、一日中太陽が沈まない時期になり、その景色はとても美しいです。冬が長く夏が短いフィンランドですが、冬から夏になると自然も人の雰囲気もがらりと変わり、陽気に、華やかになり、楽しいです。
―― ろうけつ染めを始めたきっかけを教えてください。
リタさん インドネシア旅行中に現地で流行っており、隣に住んでいた人がろうけつ染めをやっていたので、やってみたいと思いました。他の国の染物にも興味はありますが、やはりインドネシアで初めて覚えた染物は大事にしたいし、材料などもインドネシアから輸入して本格的に行っています。
―― ろうけつ染めのやり方を教えてください。
リタさん
白い生地の布を使い、色を残したいところにろうを置き、他を染めていくことで、ろうを塗ったところ以外の場所が染まります。ろうを置いては乾かしを繰り返す作業です。ろうを流す道具を使った細かな作業が多くとても難しいです。あらかじめ頭の中で完成図を組み立てて作業を行うのですが、なかなか大変です。やり方によってフィンランド風になったり日本風になったりします。
今こだわっているのは昔のデザインを再アレンジすること。そうすることで新しいことが見え、生まれてきます。インドネシアでも最近の若い人は面倒くさがりの人が多いのかバティックを使う人は少なくなっています。日本でバティックのグループを作り、技術が伝承できるよう努力しています。
永原さん作のろうけつ染め。細かな作業の結晶だ
永原さんの作品集に見入る。手前はろうけつ染めで使う道具
インタビューを終えて
◇母国から遠く離れた他国で、バティックの他にも好奇心旺盛に挑戦する向上心あふれるリタさんに憧れました。とても活き活きとした方でした(山下茉衣子)
◇インタビューを通じ、初めてバティックを知りました。お話を聞きとても魅力あるものだと思いました。リタさんの人柄の良さがとても感じられたインタビューでした。(大沼美沙子)
◇ リタさんは一人で新しい世界に入る勇気を持ち、一生懸命好きなことをやり続ける姿に感心しました。日本に留学中の私も頑張ろうと思います。(ソウジュ)
◇話を聞いて、リタさんから活力をもらいました。もっと自分らしく生きていきたいと強く感じました。(栗原華織)