新座に故郷ドイツの田舎の懐かしさを見た

―古き良き日本が好きなジャニーンさん(ドイツ)

 6年前、御主人と新座に移り住み、3人の子どもを育てながら翻訳の仕事をしているジャニーン・へーファーさん(41)の日常は、日本の主婦とほとんど変わらない。母国ドイツの大学で日本語を専攻し福井大学に1年間留学した際、そこで知り合って結婚したイラン出身の御主人を「うちの旦那さん」と呼び、新座の地域活動にも積極的なジャニーンさんの人なつこい表情には、日本人以上に日本的な一面ものぞいた。片山の自宅居間で1歳のリオン君を膝に乗せてあやしながら1時間余り。流ちょうな日本語でインタビューに答えてくれたジャニーンさんの庶民的な気さくさに、それまで私たち取材班がドイツ女性に対して抱いていた厳格なイメージが一変した。

(取材班 宮田唯、オウシンオク、工藤楓子、久門麻衣)

上手な日本語でインタビューに答えるジャニーンさん

まじめで規則が好きな性格は日独共通

―― 日本に来られたいきさつを教えてください。

ジャニーンさん  現在、都心で貿易関係の仕事をしているうちの旦那さんと同じ福井大学に1年間留学中の1997年に出会い国際結婚したのがきっかけです。

―― 新座に住むことになったきっかけはなんですか。

ジャニーンさん  最初は保谷(現在西東京市)に住んでいたのですが、2番目の子供が新座の病院で生まれたので新座に住むことにしました。一軒家は埼玉県のほうが安いという理由もありました。片山に住んで6年になります。日本に長く住んでドイツのサービス精神のなさを痛感しています。ドイツではレストランでのあいさつもなく、郵便物などは家人が不在だったときは自分で取りに行かないといけません。

―― ジャニーンさんは、新住民でしかも海外から来られたのに、結構、地域に溶け込んでいるとお聞きしました。

ジャニーンさん  保谷から引っ越してきて2年目でこの地域の会長になりました。そのおかげで地域に慣れるのが早かったです。子供が通っている学校のPTAの付き合いやママたちの交流、子供の習い事など地域の交流がかなり多いですよ。

―― これまで6年間、新座に住んだ感想をかせてください。よかった体験はありましたか。

ジャニーンさん  新座は東京より田舎だから子供のためには良いです。私自身、ドイツにいた時に住んでいたところが田舎だったから、ここは懐かしく住みやすいです。子供も多いし、高速道路の渋滞の騒音も聞こえてきません。片山の町内会での祭りでは焼きそばを出したり、スーパーで買い物をしていると顔見知りの人と会うことができて楽しいですね。新座では絆が強いです。




ご登場いただいた方々


イラリアさん

櫻さん

ジャニーンさん

シュレスタさん

シーラ先生

パパッソンさん

マシューさん

リタさん

編集後記


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「グローカル」って何だろう

新座という地元(ローカル)と、そこに根を下ろし生活する外国人(グローバル)との出会いからどのような物語が生まれるのか。

本学の日本人学生と留学生が外国人、さらに国際交流を支える日本人へのインタビューを通しグローカルの真の意味を理解しようと努めた記録である。

(2016年前期総合科目「にいざ十文字発世界へ!」)

資料をみせながらドイツについて語るジャニーンさん

―― この土地に住んで、少し困った体験はありましたか。

ジャニーンさん  新座にきてすぐにお葬式に出なければならなかったのですが、マナーがよく分からず戸惑いました。ドイツでは地域や学校の行事に親が出るケースはあまりないです。しかし日本は地域の行事やPTAに参加することが多いですね。私自身も困ったけれども、そのような体験も勉強になりました。それと日本人は親しくならないと本音を言いませんね。本音を語ってくれるようになるまでのプロセスが長いと感じます。もっとも行事に参加していて安心できる面もありましたよ。セレモニーの開始と終了時間がきちんとしているからです。ドイツ人はまじめで規則が好きです。ドイツ人も日本人も性格が似ていて時間の観念がありますから良いですね。

―― これから新座でやりたいことや日本でやりたいことはありますか。

ジャニーンさん  地域に貢献したいです。子供が大きくなったら、小学校で英語を教えたいです。

わびさびに憧れ。物より一生の思い出を大切にしたい

―― ジャニーンさんがなさっているお仕事について聞かせてください。

ジャニーンさん  子供がいるので家でやれる翻訳の仕事をやっています。小説の翻訳はとかく自分の主観が入りますし時間がかかります。機械の取扱説明書の翻訳のほうがやりやすいですね。

―― ジャニーンさんは日本語がお上手ですが、日本に来るまでにどのくらい日本語を勉強しましたか。

ジャニーンさん  4年くらい勉強しましたけど、ちゃんと話せるようになるまで半年くらいかかりました。

―― ドイツの大学と留学先の福井大学ではどんなことを学びましたか。

ジャニーンさん  日本学を専攻して日本を根本的から勉強するために漢文を学びました。福井大学では古文書を学びましたが大変でした。

―― ドイツ出身のジャニーンさんにとって日本文化の味わい深いところはどこでしょうか。

ジャニーンさん  侘び寂び(わびさび)の境地ですね。死んでも物は何も持っていけないから、思い出を大事にするという精神が好きです。自然の中で古い匂いを感じる新座の平林寺によく出かけます。「何百年前からどれだけの人が平林寺の境内を歩いているのだろうか」と想像しながら歩くのが好きです。



ジャニーンさんと長女リナちゃんと次女リリちゃん




長男リオン君も交えて記念撮影



インタビューを終えて
◇自宅訪問ということでとても緊張しましたが部屋の雰囲気も良くジャニーンさんも優しくて楽しく取材させてもらいました。(宮田唯)

◇留学生として、日本の学生たちと一緒にドイツのジャニーンさんをインタビューして、とても貴重な経験でした。いろいろ勉強になって、楽しかったです!(オウシンオク)

◇ジャニーンさんは明るく日本語が上手だったことが印象的でした。貴重な体験ができてよかったです。(工藤楓子)

◇ジャニーンさんは、歴史や神社など昔の日本に興味を持っていて日本人のようだなと思いました。(久門麻衣)