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学長室から

志村 二三夫 学長からのメッセージをお届けします。


2019.4.5 平成31年度入学式 式辞

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
こうして、コノハナサクヤヒメの満面の笑みとともに、これからの「令和」という新たな時代を、未来に向けて走り、中心となって支え、生き抜いて行く皆さんをお迎えでき、教職員一同とても嬉しく思っています。
 ご列席のご家族・保護者の皆様におかれても、お慶びはひとしおと存じます。心よりお祝い申し上げますとともに、これからの本学へのお力添え・ご協力をどうぞよろしくお願いいたします。
 ご来賓の皆様におかれては、本学への日頃のご厚情に深く感謝申し上げますとともに、お忙しい中、式典にお出まし下さいまして、誠にありがとうございます。
 
 さて、皆さんはそれぞれの夢や希望をもち、本学に入学されました。一方、世界は、アメリカと中国両大国の対立、進展しない北朝鮮の非核化、混迷するイギリスのEU離脱、トランプ政権によるゴラン高原のイスラエル主権承認のように対立関係が強まり、不安定化し、不確実性が高まっています。また、日本といえば、少子・超高齢、人生百年、女性活躍、グローバル化、多様化、ソサエテイ 5.0、消費税率引き上げとその後の経済の冷え込み、頻発する自然災害といったキーワードで語られる状況です。
 こうした社会を、皆さんは元気に生き抜かなくてはなりません。そのための基礎や、専門的職業に求められる知識や技能を学び、能力を高めて下さい。大切なのは、多くの友達、先輩・後輩、教職員、地域の方達と出会い、人間関係を築き、協働、つまりみんなの力を足し合って働く能力を高めることです。そうすることで、皆さんの夢や希望の実現が近づきます。

 本学では、学生ファースト、皆さんの伸び代を生かし、自己肯定感、自己効力感を高める教育を心掛けています。
 そこで、本学での学びの基盤となる、学園歌にある建学の理念や精神、学園歌に秘められた特色のうち、5つをお祝いメッセージとして、お伝えします。学園歌、とても「スペシャル」で「サプライズ」です。

 この大学は、十文字学園という学校法人がつくった大学。ですから、学園歌はこの学校法人の歌です。十文字中学校や高等学校も共通です。
 皆さんは既に練習したと思います。覚えましたか?この式の最後に皆で斉唱します。100年たっても色褪せない、学園創設者十文字こと先生が示す人の生き方を教えてくれています。共感して下さると確信しています。
  

 では、学園歌の第一の秘密。多分、日本一短い学園歌です。57577の短歌形式、三十一文字のスペシャルです。
 第二に、本学の目的や使命を示した学則は、建学の精神として学園歌を謳い込んでいます。少し長いですが、この部分をお伝えします。「十文字学園女子大学は、建学の精神『身をきたへ 心きたへて 世の中に たちてかひある 人と生きなむ』に基づき、社会の要請に応じる学術の理論と応用を教育研究することによって、社会・文化の発展に貢献する人間性豊かな人材を育成することを目的とする。」学園歌全部を謳い込んだ学則は、私の知る限り、見つかりません。再びスペシャルです。

 ここで、歌詞の解釈。若い人にはやや馴染み難い、いにしえ言葉ですが、「体と心を鍛錬し、生き甲斐をもち、自立した人間として、みんなと共に生きてゆきます。ぜひそうしてくださいね。」私はこう解釈しています。
 では自立した人間とは?人間という漢字には‟じんかん”という読み方があり、文字通り人と人の間、人間関係、社会、世の中を意味します。つまり、人間とはヒトという生物個体というよりは、社会的存在です。社会の一員として、みんなとなかよく、ふつうにしっかり生活する、それが自立した人間だと思います。
このように生活できれば、仮にささやかでも、生きる喜びや幸福感、つまり生き甲斐を感じられるはずです。前向きに、あかるく、なかよくが社会人力向上の基本です。本学での学び・勉強を通して、社会人力を養って下さい。
 
 第三に、学園歌の鍛え。鍛えとは鍛錬のこと。鍛錬の「鍛」の漢字は、「鍛え」と同じ、「錬」は金偏に東です。「錬」は、金属を強く熱し、不純物を除くこと。「鍛」は、金属に力を加えて丈夫にしたり、変形加工すること。鉄は鍛錬されて、潜在能力つまり伸び代が生かされ、強靭な刃金や自動車のボディーに変身します。ネット上には、真っすぐ立てた日本刀に、鉄砲の弾を打った動画があります。結果はサプライズ。弾は真っ二つ。刀の刃の鉄がしっかり鍛錬されているからです。
 鉄にできて、人間にできないはずがありません。鍛錬をとおし、皆さんの伸び代が生き、能力また自信が高まります。そして、鍛えは、当て字で、喜びに多く恵まれる、喜びを多く恵む。これまたサプライズです。

 ここで少し、皆さんの先輩の鍛えの成果をご紹介します。
昨年の学園祭。先輩達は‟きしょうてんけつ“をテーマにしました。漢字を頭の中に書いて下さい。絶句という漢詩の形式で、作文を書くコツともいわれています。先輩達はこれをもじって、起=輝く、承=笑い、転=そらの天、結は結ぶ、というユニークな四字熟語を編み出しました。そして、この「輝笑天結」に「みんなの笑顔が輝き 人と人を結ぶ」というメッセージを込めました。漢字の天は、分解すると二人、つまり人と人。確かに、笑顔が輝けば、人と人、二人が結ばれます。その結びつきが次々に広がれば、みんなの輪・和ができます。学園祭のパンフレットの表紙は、輝笑天結でみんなの輪・和がつくられ、笑顔が天に届く様子を示したイラストで飾られていました。「うーん凄い・素晴らしい」と感動しました。
 皆さんも、本学での鍛えを通して、こうした豊かな発想や感性、願い・心映えを培い、よき仲間に巡り合い、輝笑天結による人の輪づくりの大切さを学ばれることでしょう。
 鍛えの場は学内の授業や課外活動、職員による指導・支援だけではありません。地域に根差した大学として、今日は並木市長様がおいで下さっている新座市はじめ、地域社会との連携協力に努めています。皆さんは地域に飛び出し、地域の方達を先生に学び、社会人基礎力を高めることができます。

 さて、第四です。学園歌の終わりは「なむ」です。実は、この「なむ」には二つの意味があります。1つは、本人の強い意志を表す“なむ”です。したがって、学園歌は「私は・・・と生きて行きます。」という意味になります。一方、“なむ”は、誂(あつら)えの助詞といって、相手に対する願望を表します。こちらは、「あなたは、ぜひ・・・と生きて下さいね」、という意味です。ですから、学園歌は一つの歌詞で、教わり育つ学生と、教え育む教職員や地域の皆さんとの交感、心の交流を表しています。
 皆さんの中には、相聞歌について知っている人がいると思います。相談の相と、話を聞くの聞く、と書きます。恋人同士が交した和歌を指すことが多いですが、親子や師弟、知人同士の心と心の交し合いも相聞です。学園歌は一つの歌でできた相聞歌です。
 
 第五に、学園歌は教職員の強い意志・決意も表します。「私たち教職員は、体と心を鍛錬し・・・と生きて行きます。」ということです。学生の皆さんとともに、自らの伸び代を伸ばす、それが十文字の教職員です。学生ファースト、皆さんの伸び代を生かす教育のために励んでいます。

 この式の最後に学園歌を斉唱しますが、ここでお伝えした私からのお祝いメッセージを思い返して歌って下さると嬉しいです。学園歌、共感して下さると思います。本学での鍛えをとおして、皆さん自信が喜びに多く恵まれますよう、そして周りの人に喜びを多く恵むことができますよう願い、式辞といたします。

2019.3.19 平成30年度学位記授与式 式辞

 只今学位記をお渡ししたように、皆さん、それぞれの教育課程を修め、晴れてご卒業・修了となりました。心からお祝い申し上げます。ご卒業また修了、誠におめでとうございます。キャンパスの桜はそろそろ開花を迎え、皆さんの門出を祝福しています。
 ご家族・保護者の皆様におかれても、お慶びはひとしおと存じます。心よりお祝い申し上げますとともに、これまでの本学へのお力添え・ご協力に深く感謝申し上げます。
 ご来賓の皆様におかれましては、本学への日頃のご厚情、またお忙しい中、式典にご列席下さいまして、誠にありがとうございます。

 さて、皆さんの学位記の日付は、平成31年3月19日。今日は、記念すべき、平成の締め括り・節目の学位記授与式です。ですから、このことも踏まえてお話しします。
 皆さんの多くは、平成に入ってしばらく経った平成8年か9年生まれですね。その平成8年、1996年は、本学にとって画期的な年でした。1966年開設の短期大学を母体に、社会情報学部1学部1学科からなる4年制大学が誕生しました。その後、皆さんの成長と歩みを合わせるように、人間生活学部1学部9学科と大学院を擁するまでに成長し、この度、本学で初めて博士の学位を授与することができ、教育・研究機関として一応の完成に至りました。
 この間、地域に根差す中堅大学として、地域の皆様に支えられ、地域とともに発展し、地域課題の発見、解決に貢献できる大学、地域に開かれた大学、地域における知識・智恵の拠点となれるよう取り組んできました。皆さんの中には、こうした取り組みに参加し、地域に飛び出し、地域の皆様を先生に、社会人基礎力を高め、想い出を沢山作った人も多いことでしょう。地域社会との連携協力は、今後も本学にとって重要な課題です。

 一方、短期大学のルーツを辿ると、1922年開学の高等女学校。ですから、2022年で学校法人十文字学園は、100周年となります。また、来年2020年は、創設者 十文字こと先生の生誕150周年にあたるとともに、本学の教育体制は、現在の1学部から、3学部9学科の体制へと大きく変わります。皆さんも、自分の学びの歴史やこうした前向きの変容に共感し、支持して下さると嬉しいです。
 
 さて、皆さんがここまで成長する過程で、平成23年には未曽有の東日本大震災があり、日本全体が悲しみに打ちひしがれ、暗澹たる状況となりました。しかし、その年、女子サッカーワールドカップで後ほどご挨拶下さる佐々木則夫副学長が率いた『なでしこジャパン』が優勝し、国民は喜びに多く恵まれ、決してあきらめない、という前向き、未来志向の不屈の精神の尊さを改めて学びました。
 来年は東京オリンピック・パラリンピック、その前に今年はラグビーワールドカップが開催されます。国境を越えて、皆さんと同じく若い選手たちが力と力、技と技を競い合うさまは皆に元気を与えてくれます。大きなスポーツイベントをが、日本の元気回復につながるよう願っています。皆さんもきっと同じ思いではないでしょうか。

 ここまでお話ししたように、十文字学園女子大学は、皆さんの人生とほぼ同じ歳月を積み重ねる中で、大きく進化してきました。その進化を支えてきたのが十文字の「いでんし」です。この「いでんし」のことを、本学を巣立つ皆さんにぜひお伝えしたいです。
 それに先立ち、皆さんそれぞれは、実は奇跡の人です。このことをしっかり府に落とし、心に留め置いて下さい。
 
 生命が地球上に誕生したのは、40億年近く前といわれています。以来、私たちの祖先は、親が子を、子が孫をつくる営みを脈々と続けてきました。
 これは、生物に「生きなさい」と指令する遺伝子の働きによります。皆さんがよく知っている遺伝子は、英語ではジーン「g, e, n, e」。漢字の遺は「遺(のこ)す」、子は小さなものという意味。ですから、遺伝子は「生きなさい」という指令を親から子、子から孫に代々遺し伝える小さなものです。
 私たちが今ここに生きているのは、「生きなさい」と指令する遺伝子が、祖先から代々引き継がれてきたからです。私たちの祖先には、配偶者とめぐり逢い、子をつくり、遺伝子を受け渡すという仕事をする前に命を失った個体は、ただの一人あるいは、ややどぎついですが、ただの一匹もありません。大震災・水害のような天変地異、飢えや病気、事件・事故、戦争などで、子を残さずに命を失うケースは計り知れません。
私たち一人ひとりを遡れば、無数の祖先がいますが、こうした例はただの一度もなかったのです。これは、確率的に極めてまれな奇跡です。私達は、このような奇跡の証として、この世に生を享け、今ここにいるのです。本当の意味で、とてもあり得ないこと、それが事実です。まさしくありがたいこと。だから、皆さんも私も、みんなが奇跡の人です。これからの人生、苦楽いろいろでしょうが、そんな時、自分も他の人も、みんな奇跡の人。このことを思い出して下さい。ぜひ自分を、また他の人を大切にして下さい。

 そのような奇跡の人である皆さんは、本学での学びをとおして、卒業後の大きく変容する社会、少子・超高齢、人生百年、女性活躍、グローバル化、多様化、ソサエテイ 5.0、といったキーワードで語られる社会を元気に生き抜いて行かなくてはなりません。そのための基礎や、専門的職業に求められる知識や技能を教わり育ち、能力を高めました。また、大切なことですが、多くの友達、先輩・後輩、教職員、地域の方達と出会い、人間関係を築き、協働、つまりみんなの力を足し合って働く能力を高めました。
 社会に出た後は、いずれ、教わり育つ立場から、教え育てる立場がやってきます。その時には、あなたも私も奇跡の人という観点に立ち、教え育てるからさらに教え育む、というように気持ちの持ち方が変わってゆくとよいですね。
 
 さて、私たちは、「生きなさい」と指令するジーンとともに、もう一つの「いでんし」をもっています。心に思うこと、気持ち、考え、を一字で表すと、意思や意欲、注意の「意」です。もう一つの「いでんし」は、この意を伝える小さなものです。頭の中に書いて下さい。実は、十文字の「いでんし」は、こちらの「意」を伝える小さなもの、ミームのことです。
 この意伝子は、脳から脳へと文化を伝える単位です。生物進化学者のリチャード・ドーキンスさんが、提唱したミームを意訳したものです。ミームの綴りはm,e,m,e,真似る・模倣するという意味の英語ミミックとジーンをもとに創られた合成語です。
 実は、十文字の「いでんし」は、こちらの意伝子、ミームのことです。ジーンは、親から子、子から孫へと、垂直方向に順々に伝わりますが、意伝子ミームの伝わり方は違います。
 
 皆さんご存知のように、ここ記念ホールの外側、正面に向かって右手に、十文字こと先生と大元先生の像があります。皆さんは、勿論、こと先生・大元先生にお会いしていません。けれども、皆さんには両先生をルーツとし、学園歌や自彊不息(じきょうやまず)のフレーズに凝集された十文字文化・十文字スピリッツが宿っています。これが、時間や空間を飛び越えて、十文字こと先生・大元先生の脳から私たちの脳に宿っているのは、意伝子ミームのおかげです。ミームはこのように、ジーンとは異なり、時空を越えて伝わります。その過程で文化の進化や突然変異を生み出すこともあります。

 話をこの十文字の意伝子が伝えてくれる鍛えの大切さに進めます。
十文字中学・高校では、自彊不息はみんなが知っていますが、大学ではそこまでに至っていません。なので、少し補足すると、自彊不息の「自彊」は、自らをつよくすること、つまりは鍛えです。「不息」はやめない、やまない。したがって、自彊不息は、自らつとめてやまず、いつも自分を鍛え続ける、ということです。
 学園歌は、この自彊不息をより具体的に、わかりやすく示しています。この式の最後に斉唱しますが、身を鍛え、心鍛えて、世の中に、立ちて甲斐ある人といきなむ、ですね。体や心を鍛え続け、みんなと仲良く、みんなの役に立つ人になります。ぜひそうなって下さい。歌詞の最後の「なむ」の魔術によって、一つの歌でありながら、学生と教職員、学生同士、教職員同士の相聞歌になっています。
 自ら鍛える力は、自己教育力と言い換えることもできます。自己教育力は、自分が自分を、自分で自分を教育する力です。女性活躍が求められ、情報化、国際化、価値観の多様化、少子・超高齢化などがなお一層進むこれからの社会の変化に、しっかりと対応して生き抜いていくには、自己教育力を高めなくてはなりません。ぜひ、鍛え続けて下さい。

 先ほど来年の東京オリンピックに触れましたが、NHKでは大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」を放映中です。主人公の一人、金栗四三さんは、オリンピックに参加した初めての日本人で、「日本マラソンの父」と呼ばれ、箱根駅伝開催に尽力するなど、生涯にわたってスポーツの振興・発展に力を注いだ人です。生涯に走った距離は約25万キロ、有名な言葉として「体力、氣力、努力」を残しています。この金栗さんは、実は十文字高等女学校の地理・歴史の専任教諭でした。努力とは、目標実現のために、心や身体を使ってつとめることであり、つまりは鍛えと同じ。金栗さんの「体力、氣力、努力」は、学園歌や自彊不息とよく符合するようにも思います。大いなる邪推をすると、十文字の意伝子ミームが金栗さんに伝播して、学園歌や自彊不息の金栗流アレンジとして、「体力、氣力、努力」の名言を生み出したのかもしれません。
本学で学んだ皆さんは、鍛えの大切さをぜひ宝として下さい。来年のオリンピック・パラリンピックに先立ち、今年はラグビーワールドカップがありますが、ラグビーに因んだ短歌があります。

ずぶ濡れのラガー奔るを見おろせり未来にむけるものみな走る

前衛短歌の旗手と言われた塚本邦夫さんの作品なので、いろいろな解釈ができます。しかし、私は素直に、スタンドから見下ろすと、雨の中、ラグビー選手がずぶ濡れで一心に走っている。未来に向けて、ひた走っている。という若者のエネルギー、ひたむきさへの感動が謳われている、と解釈します。未来に向けるものみな走る。皆さんは未來ある人です。走りましょう。鍛えましょう。「体力、氣力、努力」です。
鍛え、努力、走り、苦しいことのようですが、鍛えは当て字にすると、き=喜び、た=多く、え=恵み。つまり、鍛えは、喜びに多く恵まれることであり、また喜びを多く恵むこと、でもあります。鍛えをとおして、自らが喜びに多く恵まれ、他の人に喜びを多く恵むことができる人、そのような人が世の中に立ちて甲斐ある人ではないでしょうか。皆さんが、自らの鍛えをとおして、喜びに多く恵まれるとともに、喜びを多く恵む、そのような世の中に立ちてかひある人となられますよう、心からお願いいたします。

 翻って、私共教職員も、自らの鍛えをとおして、建学理念の実現に向けて、大学として持続可能な発展を支え、卒業生・修了生の皆さんが社会で活躍するのを後押しできるよう、出身校としてさらに誇れる大学となるよう、弛みない努力を続けて参ります。
 
 最後になりますが、友達同士や同窓生としての集まりの時、皆さんの心のよりどころとして、学園歌を口ずさみあるいは斉唱し、人の和・絆を強め、十文字の意伝子を共有する生涯の仲間であること、アイデンティティーを確かめ合って下さると、とても素晴らしいです。
 これをもって、私からの餞の言葉といたします。


平成31年3月19日

十文字学園女子大学学長  志村二三夫


2018.10.27 第52回桐華祭テーマ「輝笑天結(きしょうてんけつ)」に想う

エンディングセレモニーで「輝笑天結」を語る志村学長

 今年の本学の学園祭、第52回桐華祭のテーマは、輝笑天結(きしょうてんけつ)。「起承転結」という、もともとは絶句という漢詩の形式の真髄をあらわす言葉。さらにここから転じて、もっとも基本的な文書の構成方法とされる言葉。これをもじり、あるいは本歌取り・本家取りしたものです。といっても、あまり世に知られていないユニークな四字熟語です。
 学生達はこの輝笑天結に素晴らしい活力・エネルギーを与えました。どうしてかは、後で述べます。
 
 まずは「起承転結」の起です。これは、文の書き起こしや背景にあたり、読み手を話に引き込む部分を示します。孟浩然の春暁という漢詩では、春眠不覚暁です。春は眠り心地がよくて気づかなかったけど、もう夜は明けたようだ。承はこの起を承(受)けて先へ広げる部分で、處處聞啼鳥。たしかに、あちこちに鳥のさえずりが聞こえる。転は、さらにぐっと盛り上げたり、視点を変え、転回させて興味を引きつける部分で、夜来風雨聲。そういえば、昨夜は風雨が強かったなあ。結は全体をまとめて結ぶ部分で、花落知多少。せっかくの花がどれくらい落ちたことだろう。
 
 今回の桐華祭を起承転結になぞらえると、これまでの50回を超える桐華祭の歴史・伝統などが起にあたります。承はこれを受けて、今回の桐華祭へと先へ広げ、構想・企画してきた部分です。そして、それを大きく盛り上げ実際に開催・運営する、祭りの本体部分です。そして、結、ああ素晴らしい、楽しい桐華祭だった。来年そして翌年の起へずっとつながってゆくのが今回の結です。

 輝笑天結に話を戻します。学生達は、この輝笑天結に「みんなの笑顔が輝き 人と人を結ぶ」というメッセージを込めました。このメッセージを解読するには、“天”という字を分解することがヒントになります。そう、“天”=“二人”、つまり人と人。確かに、輝笑天結、笑顔が輝けば、人と人が結ばれます。その結びつきが次から次に広がれば、みんなの輪・和ができます。

 今回の桐華祭のパンフレットの表紙は、輝笑天結により人の輪・和がつくられ、みんなの笑顔が天にも届く様子を示したイラストで飾られています。学生達の豊かな発想や願い・心映えに、うーん凄い・素晴らしいと感動しました。
 輝笑天結による人の輪・和づくりの大切さが、SNSやその他いろいろな形で広く拡散・普及するといいな、と願っています。

2018.4.5 平成30年度入学式 式辞

 只今お伝えしたように、本日、大学院、留学生別科を合わせ、972名という多くの皆さんが入学されました。まずは心よりお祝いと歓迎の言葉を申し上げます。新入生の皆さん、ご入学ほんとうにおめでとうございます。
 桜の賑わいは既に去り、心許ない空模様とはいえ、キャンパス奥の林では、木々の梢は芽吹いて萌え、足元に目を移せば、雑草と呼ばれそうな、野の花がいろいろ、けなげに、可憐に咲いています。こうした春の息吹とともに、フレッシュな皆さんをお迎えすることができ、本学教職員・関係者一同とても嬉しく思っています。
 ご列席のご家族・保護者の皆様におかれても、お慶びはひとしおのことと存じます。心よりお祝い申し上げますとともに、これからの本学へのお力添え・ご協力をどうぞよろしくお願いいたします。
 ご来賓の皆様におかれましては、本学への日頃のご厚情に感謝申し上げますとともに、お忙しい中、式典にお出まし下さいまして、誠にありがとうございます。

 さて、新入生の皆さんはそれぞれの夢や希望をもって本学に入学されたと思います。一方、世界は、ポピュリズムの台頭による政治不安、テロの拡散、北朝鮮の核問題、難民問題、アメリカと中国の貿易対決などを抱え、不安定化し、不確実性が高まっています。
 また、皆さんは人生100年時代を、グローバル化・国際化の中で、多様な価値観をもった人々とともに、生き抜いて行くことになります。というよりは、行かなくてはなりません。こちらの方が正確かもしれません。
 転職は当たり前。働く年齢は今よりもずっと長く、70歳台半ばにまでなるでしょう。結婚したら共働き、子育ても「夫婦共同」がふつう。100歳まで生きるうえで、とても重要なのは人間関係。友人、地域コミュニティ、趣味のつながりなどをもつことが欠かせません。
 こうした先行きの時代であればこそ、本学での学び・勉強をとおし、女性活躍社会の担い手として、ぜひ皆さんの夢や希望の実現に近づいて行ってくださるよう願っています。本学での学びの過程でしっかりと培った力がこれからの時代を生き抜く上できっと役立つはずです。

 国の中央教育審議会は、これからの若い人が、社会で自立的に活動していくために必要な「学力の3要素」を、バランスよく育むことが必要としています。
 この学力の3要素とは次の3つです。
 第一に、知識・技能の確実な習得。第二に、それらの習得に基づく思考力、判断力、表現力。第三に、主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度。大学では、高校までに培った力をさらに向上・発展させ、社会に送り出すための教育が求められています。
 
 皆さんの多くは、オープンキャンパスや本学の学園祭である桐華祭にいらして下さいました。そのような折、案内役や説明役の本学学生の態度やコミュニケーション力、優しさ等に接し、自分もあのようになりたいと思われたのではないでしょうか。日々の授業で教わり育んだ成果が生きています。それとともに、案内役や説明役をつとめることが、学力の3要素の第三、主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度を育むのに大いに役立っています。
 また、本学は、平成26年に文部科学省の地の拠点整備事業に採択されました。地の拠点は、地域における知識の拠点という意味です。これをきっかけに、地域を学び、地域で学び、地域に生かす、という合言葉で、学生たちが地域に飛び出して行って、地域の皆さんと交流し、先生とし、多くのことを学び、社会人となるための基礎力を高めています。こうした活動については、テレビや新聞、学内ホームページ等で紹介されているので、ご存知の方も多いと思います。
 本学では、授業担当教員による教育とともに、担任による教育・指導も重視しています。以前、短期大学を母体に4年制大学が開学した際に学長を務められた鈴木一雄先生は、担任は親と同じ、そのような気持で学生に接しなさいと、おっしゃっていたそうです。親と同じとは、慈愛に裏打ちされた厳しさ、でもあると思います。そうした親身の教育を大切にする風土は、今も脈々と伝わっています。
慈愛に裏打ちされた厳しさをさらに遡れば、既に皆さんが練習した、建学の理念を凝集した学園歌に行き着きます。この式の最後に皆で斉唱しますが、覚えましたか?何となく陰気で嫌い、という人もいるかもしれません。でも、学園歌、とてもスペシャルでサプライズです。その秘密は、去年の入学式の式辞で述べましたが、ネット上の学長室からというページに詳しく載っているので、是非お読み下さると嬉しいです。

「身をきたへ 心きたへて 世の中に たちてかひある 人と生きなむ」、

短歌形式、三十一文字で、若い人にはやや馴染みにくいいにしえ言葉ですが、「体と心を鍛え、生き甲斐をもち、自立した人間として、みんなと共に生きてゆきます。ぜひそうしてくださいね。」、私はこんな風に解釈しています。

 このご挨拶の初めに、おめでとうございますといいました。おめでとうは、春の息吹とともに、芽吹いたね、芽が出たね。そだねー、よかったねー。ということ。植物が、日照りにさらされ、風雪に打たれて、でも負けない。花を咲かせ、実を結ぶための仕事の始まりが、芽吹きです。本学へのご入学が、皆さんの生涯にわたる新たな学びのスタートのおめでとうとなるよう、お祈りします。それには、自らを鍛え続け、自己教育力を高めなくてはなりません。
 ぜひ、鍛えて下さい。鍛え、当て字にすると、喜びを多く恵む、です。では最後に少し頭の体操をしましょう。頭の中に漢字で書いてみて下さい。鍛えあれば、喜多恵あり。鍛えなくして、喜多恵なし。できましたか?皆さんが、喜びに多く恵まれますよう、自らを鍛え続けて下さるよう心から願って、ご入学に当たっての私からのお祝いの言葉といたします。

2018.3.19 平成29年度学位記授与式 式辞

 只今学位記をお渡ししたように、皆さん、所定の教育課程を修め、晴れてのご卒業・修了を迎えられました。まずは、心よりお祝いの言葉を申し上げます。ご卒業また修了、誠におめでとうございます。
 キャンパスの桜もそろそろ開花を迎え、皆さんの新たな門出を祝ってくれています。
 ご列席のご家族・保護者の皆様におかれましても、お慶びはひとしおのことと存じます。心よりお祝い申し上げますとともに、これまでの本学へのお力添え・ご協力に深く感謝申し上げます。
 ご来賓の皆様におかれましては、本学への日頃のご厚情、またお忙しい中、式典にご列席下さいまして、誠にありがとうございます。
 それでは、十文字の意伝子のことをお伝えして、皆さんへのお祝いのことばにしたいと思います。これを皆さんにお伝えするのは、私の務めであると考えています。それに先立ち、皆さんそれぞれは奇跡の人であることをお話します。

 生命が地球上に誕生したのは、40億年近く前といわれています。以来、私たちの祖先は、親が子を、子が孫をつくる営みを脈々と続けてきました。
 これは、生物に「生きなさい」と指示する情報を伝える、遺伝子の働きによります。遺伝子は、英語ではジーン、g, e, n, eです。
 遺伝子の遺は、遺(のこ)すという意味、子は小さなものを示します。ですから、遺伝子は「生きなさい」という指令を子孫に遺し伝える小さなもの、を意味します。
 私たちが今ここに存在しているということは、 私たちの祖先には、 配偶者とめぐり逢い、 子をつくり、のこすという仕事をする前に命を失った個体は、ただの一つもないことを意味します。
 東日本大震災のような天変地異、 飢えや病気、 災害や事件・事故、戦争などにより、 子を残さずに命を失うケースは計り知れません。
 こうした事態が私たちの祖先には一度も起こらずに、ずーっと続いてきたのです。これは、確率的に極めて、極めて、極めてまれなことです。このような奇跡の証として、 私達はこの世に生を享け、今ここにいるのです。漢字を頭の中に書いてみて下さい。ありがたい、これを漢字で。有ることが難しい。まさしく、文字どおりです。皆さんも私も、みんなが生物学的観点から見て、奇跡の人です。
 これからの人生、いろいろあるでしょうが、何かの折に、ご自分がまた周りの人もみんな奇跡の人だという、私の話を思い出して下さると嬉しいです。ぜひご自分を、また他の人を大切にして下さい。
 そのような奇跡の人である皆さんは、本学での学びをとおして、卒業後の社会で生き抜くための基本的な力や、専門的職業に求められる知識や技能を教わり育ち、能力を高めました。それとともに、とても大切なことですが、多くの友達、先輩・後輩、教職員、地域の方達と出会い、人間関係を築き、人間関係力を高めてきました。この人間関係を築く中でも、いろいろと奇跡があったことと思います。そのような経験を社会に出てからも、ぜひ生かして下さい。
 そして、社会に出た後は、いずれは教わり育つ立場から、教え育てる立場がやってきます。その時には、あなたも私も奇跡の人という観点に立ち、教え育てるからさらに教え育む、というように気持ちの持ち方が変わってゆくとよいですね。
 このお話のはじめに触れた、皆さんがよく知っている遺伝子は、「生きなさい」と指示する情報を、親から子、子から孫へと伝えます。
 このような遺伝子とともに、私たちは別の字で書く意伝子をもっています。心に思うこと、気持ち、考え、を一字で表すと、意思や意欲、注意の意、となります。もう一つの遺伝子は、この意を伝える小さなものということです。頭の中で書いてみて下さい。できましたか。
 この意伝子は、脳から脳へと文化を伝える単位です。生物進化学者のリチャード・ドーキンスさんが、ジーンから類推して提唱したミームというものが日本語に意訳されたものです。
 実は、十文字の意伝子とは、こちらの、意を伝える小さなもののことです。意伝子ミームは、親から子、子から孫へと伝わるジーンとは異なり、時間や空間を飛び越えて、十文字こと先生の脳から私たちの脳に伝わることもできます。時間や空間を飛び越えて伝わるので、文化の進化や突然変異を引き起こすこともあります。

 この十文字の意伝子について話を進めます。
 皆さんご存知のように、ここ記念ホールの外側、正面に向かって右手に、十文字こと先生と並んで、大元先生の像があります。
 大元先生は、みずから進んで新しい物事に取り組む、進取の精神に富む方であったことが、Wikipediaにも書かれています。
 本日、ご来賓としておいで下さっている大橋町長様の地元、宮城県涌谷町のご出身です。
 実業家として成功されたとともに、ご自分の病気の治療に役立った体操を自彊術と命名し、その普及啓発に尽くされました。十文字中学・高校では、創立以来、自彊術体操が、朝の日課となっています。
 この自彊という言葉ですが、自彊不息(じきょうやまず、あるいはじきょうふそく)という四字熟語の形で、古代中国の本、易経に登場します。自彊の自は自分の自、彊は新疆ウイグルの疆に似た、いかにもがっちりした字で、強さを意味します。ですから、自彊は自らをつよくすること、つまりは鍛えです。不息はやめない、やまない。したがって、自彊不息は、書き下し文では、みずからつとめてやまず、と読み、いつも自分を鍛え続ける、という意味になります。
 易経の中では、「天行建なり 君子は以て自らつとめて息まず」、という形で出てきます。この意味は、月や星などの天体の運動が一時も止まらないように、君子はいつも自分を鍛え続ける、ということです。
 ところで、君子、これは、古代中国では理想的人格を表します。王侯貴族や、社会的地位や身分の高い人達を思い浮かべがちです。しかし、私は、初めから君子があるのではないと思います。
 学園歌は、身を鍛え、心鍛えて、世の中に、立ちて甲斐ある人といきなむ、とあります。この身を鍛え、心鍛え、その結果としてめざし、希求する、世の中に立ちて甲斐ある人。それこそがそれぞれの人にとっての君子であると、私は思います。
 十文字では、高等女学校としての創設以来、時代変化を見据えて、中学校、高等学校、短大、幼稚園、大学、そして大学院をつくり、大きく発展してきました。そうした中で、ゆるぎなく、しっかりと守り抜いてきた伝統や文化があります。その最も大事なものが、学園歌に込められた建学の精神また「自彊不息(じきょうやまず)」の理念でしょう。
 皆さんは、勿論、こと先生と大元先生にお会いしてはいません。けれども学園歌や自彊不息(じきょうやまず)をとおして、こと先生と大元先生の脳から皆さんの脳へと、時間を超えてジャンプして、十文字文化の真髄である、自ら鍛えることの大切さを伝える、意伝子ミームが伝わっていますね。
 自ら鍛える力は、自己教育力と言い換えることもできます。自己教育力は,自分が自分を,自分で自分を教育する力です。女性活躍が求められ、情報化、国際化、価値観の多様化、少子・超高齢化などがなお一層進むこれからの社会の変化に、しっかりと対応して生き抜いて行くには、自己教育力を高めなくてはなりません。ぜひ、鍛えて下さい。
 鍛え、それは当て字にすると、喜びを、多く、恵む、となります。皆さんが、自らの鍛えをとおして、喜びに多く恵まれますよう、こころよりお祈りします。
 また、ディズニーの文化を人々に伝えるミッキーやミニーのように、皆さんが、鍛えを大切にする十文字文化をほかの人に伝えるアンバサダーになって下さると嬉しいです。それが、仮にささやかであったとしても、皆さんが主役となる、これからの社会の活性化にきっと役立つと信じています。
 そのような期待を込めて、はなむけの言葉の結びといたします。
 あらためて、本当におめでとうございます。

2017.4.5 平成29年度入学式 式辞

まずは、お祝いと歓迎の言葉を申し述べます。新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。春爛漫、桜の花の賑わいを連れてきてくださった皆さんをこうしてお迎えすることができ、本学教職員・関係者一同とても嬉しく思っています。
ご列席のご家族・保護者の皆様におかれても、お慶びはひとしおのことと存じます。心よりお祝い申し上げますとともに、これからの本学へのお力添え・ご協力をどうぞよろしくお願いいたします。
なお、私事になりますが、私はつい先日、4月1日に学長に就任したばかりの新米です。年寄りの古古米なのに新米とはこれいかに、ですが、フレッシュな皆さんの若さ・明るさ・元気をおすそ分け頂いて励みます。

さて、新入生の皆さんはそれぞれの夢や希望をもって本学に入学されたと思います。一方、世界は、ポピュリズムの台頭による政治不安、イギリスのEU離脱、トランプ大統領の誕生、テロの拡散など、不安定化し、不確実性が高まっています。逆に、こうした時代であればこそ、本学での学び・勉強をとおし、ぜひ皆さんの夢や希望の実現に近づいて行ってください。その過程でしっかりと培った力が不確実性の時代を生き抜く上できっと役立つはずです。

小池都知事は都民ファーストをスローガンに掲げていますが、本学では私の前の学長横須賀薫先生が提唱した、学生が第一、学生の伸び代を生かす教育を心掛けています。そこで、このような本学での学び・勉強の基盤となる、学園歌にある建学の理念や精神、学園歌に隠された秘密の5つほどをお祝いのメッセージとして、お伝えしたいと思います。十文字学園の学園歌、とてもスペシャルでサプライズです。

さて、その前に、学園歌の学園ってなに?と思われる方があると思います。実は、この大学は、十文字学園という学校法人がつくった大学です。ですから、学園歌はこの学校法人の歌です。十文字中学校や高等学校も共通の学園歌です。
皆さんは既に学園歌を練習しましたね。この式の最後に皆で斉唱しますが、覚えましたか?何となく陰気、という人もいるかもしれません。でも、そのうちに、合点し、腑に落とし、学園歌を好きになって下さると嬉しいです。

では、学園歌の第一の秘密。多分、日本一短い学園歌の一つです。57577の短歌形式、三十一文字のスペシャル学園歌です。
第二に、本学の目的や使命を示した学則は、建学の精神として学園歌を謳い込んでいます。少し長くなりますが、この部分を読みます。「十文字学園女子大学は、建学の精神『身をきたへ 心きたへて 世の中に たちてかひある 人と生きなむ』に基づき、社会の要請に応じる学術の理論と応用を教育研究することによって、社会・文化の発展に貢献する人間性豊かな人材を育成することを目的とする。」学園歌の全部を謳い込んだ学則は、私の知る限り、見つかりません。再びスペシャルです。

ここで、歌詞の解釈をしてみましょう。若い人にはやや馴染みにくい、いにしえの言葉ですが、「体と心を鍛錬し、生き甲斐をもち、自立した人間として、みんなと共に生きてゆきます。ぜひそうしてくださいね。」、私はこんな風に解釈しています。

では、自立した人間とは?人間という漢字には〝じんかん〟という読み方があり、文字通り人と人の間、人間関係、社会、世の中を意味します。つまり、人間とはヒトという生物個体というよりは、社会的存在です。社会の一員として、みんなとなかよく、ふつうにしっかり生活している、それが自立した人間だと思います。

このように生活できれば、仮にささやかでも、生きる喜びや幸福感、つまり生き甲斐を感じられるはずです。前向きに、あかるく、なかよくが社会人力向上の基本です。本学での学び・勉強を通して、社会人力を養って下さい。

第三に学園歌にある鍛えについて。鍛えとは鍛錬のこと。鍛錬の鍛は、鍛えと同じ、錬は金偏に東です。
金属を強く熱して不純物を除くことが錬。金属に力を加えて丈夫にしたり、変形加工することが鍛。鉄は鍛錬を受けて、潜在能力つまり伸びしろが生かされ、強靭な刃金や自動車のボディーに変身します。
もしかして、ネット上の画像を見た人がいるかもしれません。真っすぐ立てた日本刀に向かって、鉄砲の弾を打つと、どうなったでしょう?何と、弾は真っ二つに割れました。このサプライズは、刀の刃の鉄が鍛錬を受けたお陰です。
鉄にできることが人間にできないはずがありません。鍛錬また勉強、強くなるよう勉めることで伸びしろが生き、能力が高まります。そして、鍛えは、当て字で書けば、喜びを多く恵む、となります。これまたサプライズです。
十文字女子大の鍛えの場は学内の授業や課外活動、職員による指導・支援だけではありません。本学は地域に根差した大学として、新座市はじめ近隣自治体・地域社会等との連携協力に努めています。皆さんは地域活動をとおして自治体や地域の方を先生・先達として多くを学ぶことができます。

さて、第四です。学園歌は、人と生きなむ、というようになむで終わります。実は、このなむには二つの意味があります。一つは自分自身の意志を表します。したがって、学園歌は「私は…と生きて行きます。」という意味になります。一方、なむは誂(あつら)えの助詞として、相手に対する願望を表す場合があります。こちらの場合は、「あなたは、ぜひ…と生きて下さいね」、という意味です。ですから、学園歌は一つの歌詞の中で、教わり育つ学生と、教え育てる教職員や地域の皆さんとの交感、心と心の交流を表しています。
皆さんの中には、相聞歌について知っている人がいるかもしれません。相談の相と話を聞くの聞く、と書いて相聞。恋人同士が交し合った和歌を指すことが多いですが、親子や師弟、知人同士での心と心の交し合いも相聞です。学園歌は一つの歌でできたサプライズでスペシャルな相聞歌です。

第五に、学園歌は教職員の強い意志・決意を表すものでもあります。「私たち教職員は、体と心を鍛錬し…と生きて行きます。」ということです。学生の皆さんとともに、自らの伸び代を伸ばす、それが十文字の教職員です。学生が第一、学生の伸び代を生かす教育のために励んでいます。

この式の最後に学園歌を皆で歌いますが、ぜひここでお伝えした私からのお祝いのメッセージを少しでも思い返して歌って下さると幸いです。これをもって私の式辞といたします。

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