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教育人文学部

卒業研究は心理学科の財産です


心理学科は卒業研究が必修です。
そのテーマは学生さんが自分で選びます。

卒業研究では日常生活のギモンに、
心理学の知識と手法を活用して、アプローチします。
「心理学を活かした探究学習」と言えるかもしれません。

卒業研究は、卒業する学生さんが心理学科に残してくれる
素敵な発見であり、財産です。
その一部をおすそ分けします。

財産その2:体型評価と自尊心〜自分を見る目、他人を見る目

RTさん(2024年3月卒。平田ゼミ)
卒業研究の原題「高い理想が歪ませる若年女性の体型認識」
日本の女性は自分を「実際よりも太っている」と感じる傾向があります。
RTさんは体型認識の特徴と自尊心(自分を大切にする気持ち)との関係を調べました。

関東地方に住む女子大学生116名を対象に、オンライン調査を行いました。
BMI(体格指数) 16から30までの体型画像スケールを作り(図1参照)、参加者に
・現在の自分だと思う体型
・自分の理想とする体型
を0-100点で評価してもらいました。
また身長と体重も尋ね、実際のBMIも計算しました。
さらに3人の架空モデルの顔写真と身長、体重だけを示し、
図1を使って体型を推測してもらいました。
図1: 体型画像スケール(BMI16-30)

参加者の実際のBMIは平均20.0(標準体重)でしたが、自分の体型は平均BMI22.1と評価されました。自分を実際よりも太めに感じています。
一方、理想とする体型のBMIは18.7と最も低い値でした(図2左)。
ところが他人の体型については全く異なる結果になりました。
架空モデル3人については、身長と体重の情報だけでかなり正確、つまり架空モデルのBMIに近い体型を推定できたのです(図2右)。
図2:自分(左)と他人(右)の体型評価

自分だけに向けられるこの「厳しい眼差し」は、自尊心に影響しないのでしょうか。
統計分析の結果、実際の体型と理想の体型のズレの大きさと、自尊心の高さには関係がありませんでした(図3)。
つまり理想と実際とのギャップが大きくても、自尊心は下がらないのです。
図3:実際・理想BMIのズレと自尊心得点の関係

このように女子大学生の「理想の体型」は、自分を批判するためのものではなく、自分らしさを作り上げる「道しるべ」として機能している可能性がみえてきました。

財産その1:ダンスの上手な人は振付けをどうやって覚えているのか?

ANさん(2025年3月卒。平田ゼミ)
卒業研究の原題「連続技能の記憶形成としてみた振り付けの学習過程」
ダンスは楽譜のない、複雑な動きの身体芸術です。
ダンスの上手な人は、どうやって振付けを覚えているのでしょうか。
心理学科のANさんは卒業研究で、この疑問に取組みました。

彼女は韓国の人気ダンスグループSTAYCの“POPPY”の15秒間(1:03-1:18) を、7人のダンス経験者に完コピしてもらいました。

お手本動画は3つの部分動画(0-4秒、4-8秒、8-15秒)と全体動画(0-15秒)、あわせて4種類について、通常速度(100%)と遅い速度(70%)で再生する8種類でした。
経験者7人は8種類の動画を自由に選んで観ながら練習する10分間と、音に合わせて踊るテストを3回、繰返しました。
ANさんは、7人がどの動画を何回観たかを記録し、テストの出来栄えを採点しました。

3回目のテスト結果から、7人の経験者は上手群2名、中間群3名、残念群2名に分類されました。
まず上手群2名が練習に選ぶ動画は他の5名と変わらない、と分かりました。
ダンスの技能に関わらず、7名は最初に遅い再生速度の部分動画で練習し、少しずつ通常速度での全体動画に移りました。

上手な人2名の特徴は、振付けを表現する言葉の「短さ」でした。
図1:お手本動画
(全体動画。再生速度100%)
図2:(上)振付けを言葉で説明した例。(下)テスト3の得点と1コマの平均文字数

3回目のテストの後、7人は振付けを言葉で説明するよう求められました(図2上)。
そのとき上手群2人が使った文字数は少なく、短い言葉で動きを表現していました(図2下の横軸はテスト3の得点、縦軸は1コマあたりの平均文字数)。

中間群のように多くの文字を使えば、振付けを詳しく記述できます。
しかし速く複雑なダンスを長い言葉で表現すると、動きが遅れてしまう可能性があります。
上手群の2人は短く的確な言葉で、目まぐるしく動く振付けを表現しているのかもしれません。

この卒業研究では、記憶という心理学の視点から、ダンスの学習過程に取組みました。
このように心理学は、日常生活に潜む心の働きにアプローチする学問といえます。
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