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教育人文学部

読んではいけない「文学作品」


名作と言われて素直にそれをうけいれてしまって、本当によいのか? もしかしたら、社会に悪影響を及ぼす迷惑な作品かもしれない。そんな“迷作”リストを紹介します。リスト内容は随時追加されますので、時々のぞいてみてください。
2026年月1月15日 更新

夏目漱石「こころ」

私はその人を常に先生と呼んでいた。

教科書では「先生の遺書」の一部分だけ読むので、〈先生〉〈お嬢さん〉〈K〉の三角関係による葛藤ばかりが、この作品のイメージをつくっていますけれど、物語全体に視野を広げてみると、これ、そんな甘い話じゃありませんよ。

〈K〉を裏切った〈先生〉は、そもそも自身が信頼していた叔父さんに、金銭上の問題で裏切られていました。つまり、〈先生〉は裏切りの連鎖をかかえています。

〈先生〉の周りをうろちょろする〈私〉も、危篤の父を見舞っていたのに、〈先生〉の遺書を読んだとたん、親を捨てて東京に戻ってしまうという裏切りを犯す。しかし問題は、〈私〉が犯す裏切りは、はたしてこれだけなのかということです。

先生という言葉から、つい作者である40代の漱石と重ねてしまいがちですが、諸々の状況から計算して、おそらく〈先生〉が自殺するのは36~38歳。その奥さんである〈お嬢さん〉は30~32歳。〈私〉は23~25歳。30代になってみればわかりますが、前後10歳は全然アリです!

そもそも下宿先の女性たちが、〈K〉の自殺の原因に気づかないわけがないでしょう。一番したたかなのは〈先生〉の奥さんではないかとは、以前から研究者のあいだで指摘されてきていることです。(選者:小林実)

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