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教育人文学部

読んではいけない「文学作品」


名作と言われて素直にそれをうけいれてしまって、本当によいのか? もしかしたら、社会に悪影響を及ぼす迷惑な作品かもしれない。そんな“迷作”リストを紹介します。リスト内容は随時追加されますので、時々のぞいてみてください。
2025年1月18日 更新

ジョリス=カルル・ユイスマンス「さかしま」

ルウルの城館に所蔵されている数枚の肖像画から判断すると、フロルッサス・デ・ゼッサントの一族は、往時、兵卒あがりの乱暴者や、傭兵くずれの荒くれ男たちから成っていた。(澁澤龍彦訳)

「《好き》を究める」をテーマにしている文芸文化学科ですが、本気で《好き》を究めた末の頽廃の臨界点を描いているのがこの作品。《推し》のために生活の全てをなげうって悔いることを知らない狂気を知ってこそ、生きることの真理に達する(かもしれません)。だから超然と世間の凡俗をあざ笑ってやりましょう。
主人公デ・ゼッサントはこう語ります――「いったい、自分とあのブルジョア階級、あらゆる災害を利用して金をもうけ、あらゆる禍いを起して己の犯罪と盗みに敬意を表させながら、少しずつのし上がって行くブルジョア階級とのあいだには、いかなる接触点があり得るであろうか?」「しかも臆病なブルジョアどもは、彼らにとって永遠に必要な瞞されやすい相手、すなわち下層階級の人間どもに対しては、情け容赦もなく機関銃の霰弾をあびせかける。場合によっては、みずから彼らの口輪をはずしてやって、彼らを待伏させ、彼らの尻をひっぱたいて、古い特権階級の喉笛に嚙みつかせようとする。」
尤も今の国際社会の現実をみるかぎり、頽廃した知識人の呪詛なんて、《リアリスト》を任ずる権威主義者とその支持者に届きはしないのですが…。(選者:小林実)

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