2023年7月
子育て講演会 「はらっぱ」におじゃましました2023! Part1!
2023年7月6日(木)に令和5年度 第1回 子育て講座「はらっぱ」が十文字女子大附属幼稚園で開催されました。
今年で16年目になる子育て講座「はらっぱ」は、十文字学園女子大学と十文字女子大附属幼稚園の共催となっており、附属幼稚園に大学から先生をお迎えして、附属幼稚園の保護者の方や地域の皆さんを対象に専門家のお話を聞ける講座となっております。参加費は無料。現地参加とオンラインの同時開催です!
今年で16年目になる子育て講座「はらっぱ」は、十文字学園女子大学と十文字女子大附属幼稚園の共催となっており、附属幼稚園に大学から先生をお迎えして、附属幼稚園の保護者の方や地域の皆さんを対象に専門家のお話を聞ける講座となっております。参加費は無料。現地参加とオンラインの同時開催です!
「心に潜んでいる“認知バイアス”とは 」
十文字学園女子大学 心理学科
教授 池田まさみ 先生
【講義概要】みなさんは、時々「なんでこんなもの買ってしまったんだろう!」とか、「あの時、なんで賛成しちゃったんだろう!」などと思うことはありませんか。そこには、私たち人間の記憶や思考といった認知のゆがみ、すなわち「認知バイアス」が関わっていることがあります。最近よく聞かれる「アンコンシャスバイアス」もこのバイアスのひとつです。バイアスと聞くと良くないイメージがあるかもしれませんが、実は、認知バイアスには、ネガティブな面だけでなくポジティブな面もあります! どんな時にどんな認知バイアスが生じるかを「知っておく」ことで、トラブルを未然に防いだり、リスクに対処できたりすることがあります。みなさんと一緒に「あるある体験!ワーク」を通して、私たちの心に潜む「認知バイアス」を探ってみたいと思います。
【略歴】お茶の水女子大学大学院人間文化研究科修了。博士(学術)。同大学院助手・講師・准教授を経て、2011 年より現職。専門は認知心理学。視覚認知や思考のメカニズムを実験的に検証している。また、子ども向けに心理学実験の教材開発などを手掛けている。2018 年、認知バイアスを紹介するHP「錯思コレクション100」を開設。
【錯思コレクション100】
https://www.jumonji-u.ac.jp/sscs/ikeda/cognitive_bias/
【錯思コレクション100】
https://www.jumonji-u.ac.jp/sscs/ikeda/cognitive_bias/
講義の中では、クイズ形式で、参加者のみなさんに、日常よくある場面で「こんな時、あなたなら、どちらを選びますか?」と、お尋ねします。すると、参加者のみなさんは、選び方が偏っていること、つまり “認知バイアス” が心に潜んでいることを体験します。体験を共有することが大切で、共有することで、私たちは似たような「思考のクセ=認知バイアス」をもっていることを実感しました! そして、体験&共有したところで、先生から、なぜ、そのような選択になったのか、そこにどのような認知バイアスが関わっているかを説明いただきました。参加者のみなさんも、積極的に参加くださり、あっという間に時間が過ぎてしまい、楽しい回となりました。
コロナの感染症法上の位置づけが「5類」に変わったこともあり、会場は去年よりも多くの方が小さなお子様と一緒に参加くださいました。プロジェクタ(投影機)を興味深くのぞく子どもや、じっとしていられなくて泣いてしまう子など、幼稚園ならではの、あたたかい雰囲気の講習会となりました
コロナの感染症法上の位置づけが「5類」に変わったこともあり、会場は去年よりも多くの方が小さなお子様と一緒に参加くださいました。プロジェクタ(投影機)を興味深くのぞく子どもや、じっとしていられなくて泣いてしまう子など、幼稚園ならではの、あたたかい雰囲気の講習会となりました
今回の講義の主な内容
1. 心理学 とは?
心理学と聞くと
カウンセリングや臨床といったイメージが
あるかもしれませんが、それだけではありません。
心理学とは、実証的方法により、
人間の行動や心的過程を解明しようとする
科学である、とされています。
「心」とは?
気持ちや感情のことだけでなく
観察・選択したりできるのも「心」のはたらき
問題を解決しようとするのも「心」のはたらき
知っていて、判断できるのも「心」のはたらき
そこで、心理学では、
世界を二分して
“物理世界”と“心的世界”
に分けて考えます!
なぜ、分けて考えるのか。
例(下の図)をご覧ください。
カウンセリングや臨床といったイメージが
あるかもしれませんが、それだけではありません。
心理学とは、実証的方法により、
人間の行動や心的過程を解明しようとする
科学である、とされています。
「心」とは?
気持ちや感情のことだけでなく
観察・選択したりできるのも「心」のはたらき
問題を解決しようとするのも「心」のはたらき
知っていて、判断できるのも「心」のはたらき
そこで、心理学では、
世界を二分して
“物理世界”と“心的世界”
に分けて考えます!
なぜ、分けて考えるのか。
例(下の図)をご覧ください。
エビングハウスの錯視と呼ばれる右図では、真ん中の円の大きさは同じですが、右の真ん中の円の方が大きく見えませんか。また、遠近法錯視でも、3枚の長方形は同じ大きさですが、廊下のような斜線があると、一番上の長方形が大きく見えませんか。
つまり、世界を二分して考える理由は、「外界 (=物理世界)」 と「知覚 (=心的世界)」 は同じではない!からです。人間はカメラのように、物理情報の通りには見えていない、ということですね。
なぜ、このような錯視が生じるのかと言うと、たとえば、遠近法錯視であれば、これまでの「経験」によって、遠くに見えるものは近くにあれば長い(大きい)はずだと、脳が推論からです。「見える」というのは当たり前のことのようですが、私たちの意識しないところで「脳が見え方のひとつの答え」を出しているんですね。つまり、ものは「目」だけで見ているのではなく、「目」を通して、「脳」で見えている!ということです。
Irvin Rock (米心理学者 1922-1995)はこんなふうに言っています。
私達の脳のなかの視覚システムがいま見えている状態にもっとも納得のいく解釈を一生懸命「つくりあげている」かのようだ。
これは「無意識的推論」と呼ばれています
つまり、世界を二分して考える理由は、「外界 (=物理世界)」 と「知覚 (=心的世界)」 は同じではない!からです。人間はカメラのように、物理情報の通りには見えていない、ということですね。
なぜ、このような錯視が生じるのかと言うと、たとえば、遠近法錯視であれば、これまでの「経験」によって、遠くに見えるものは近くにあれば長い(大きい)はずだと、脳が推論からです。「見える」というのは当たり前のことのようですが、私たちの意識しないところで「脳が見え方のひとつの答え」を出しているんですね。つまり、ものは「目」だけで見ているのではなく、「目」を通して、「脳」で見えている!ということです。
Irvin Rock (米心理学者 1922-1995)はこんなふうに言っています。
私達の脳のなかの視覚システムがいま見えている状態にもっとも納得のいく解釈を一生懸命「つくりあげている」かのようだ。
これは「無意識的推論」と呼ばれています
2.認知バイアス とは? モノの見え方 と 考え方 心理学 実験 で確かめてみよう!
では、自分が意識できているところでは、このような錯覚はおきないのでしょうか?
さまざまな日常場面を例に
みなさんとクイズをしてみました!
いかがでしたか。
自分が経験したことのない現象は
めったに、起こらないのではないか・・・
逆に
自分がよく接している現象は
頻繁に、起きているのではないか・・・
と感じてしまうことがあります。
これが
認知的バイアス
||
人間に共通する考え方のクセ
さまざまな日常場面を例に
みなさんとクイズをしてみました!
いかがでしたか。
自分が経験したことのない現象は
めったに、起こらないのではないか・・・
逆に
自分がよく接している現象は
頻繁に、起きているのではないか・・・
と感じてしまうことがあります。
これが
認知的バイアス
||
人間に共通する考え方のクセ
認知バイアス と うまく つき合う方法
認知バイアスの中には、たとえば、「楽観性バイアス」といって、楽観的になることで、それが心の健康につながることもあります。
一方で、自分の気づかないところで、バイアスが入り込んでしまって、上手くいかなかったり、トラブルが生じたりすることもあります。
そこで
ものごとを正しく推論するために大切なのが
クリティカルシンキング = 批判的思考
これは、理にかなった、偏りのない考え方のこと。そして、他者の考えだけでなく、自分の考えに対しても、客観的に考えることを指します。
これは「メタ認知」にも通じます。
クリティカルシンキングに重要なのは
「自分の知っていることと、知らないことを、知っている」
という状態=メタ認知をつくることです。
一見、難しそうに見えますが、まずは、
「ちょっと待てよ!」「それ、本当かな?」
を心がけることで、メタ認知ができてくるようになります。
ものごとを 鵜呑みにしない!
自分の言葉で伝えられるか=理由を言えるか
証拠はあるかなどを確認することが大切です。
そして、何より、
どんな場面で、どんな認知バイアスがあるかを
知っておくことが大切です。
ぜひ、以下の「錯思コレクション100」で
さまざまな認知バイアスをご覧ください。
https://www.jumonji-u.ac.jp/sscs/ikeda/cognitive_bias/
認知バイアスの中には、たとえば、「楽観性バイアス」といって、楽観的になることで、それが心の健康につながることもあります。
一方で、自分の気づかないところで、バイアスが入り込んでしまって、上手くいかなかったり、トラブルが生じたりすることもあります。
そこで
ものごとを正しく推論するために大切なのが
クリティカルシンキング = 批判的思考
これは、理にかなった、偏りのない考え方のこと。そして、他者の考えだけでなく、自分の考えに対しても、客観的に考えることを指します。
これは「メタ認知」にも通じます。
クリティカルシンキングに重要なのは
「自分の知っていることと、知らないことを、知っている」
という状態=メタ認知をつくることです。
一見、難しそうに見えますが、まずは、
「ちょっと待てよ!」「それ、本当かな?」
を心がけることで、メタ認知ができてくるようになります。
ものごとを 鵜呑みにしない!
自分の言葉で伝えられるか=理由を言えるか
証拠はあるかなどを確認することが大切です。
そして、何より、
どんな場面で、どんな認知バイアスがあるかを
知っておくことが大切です。
ぜひ、以下の「錯思コレクション100」で
さまざまな認知バイアスをご覧ください。
https://www.jumonji-u.ac.jp/sscs/ikeda/cognitive_bias/
ニーチェ (1844-1900)の言葉をご紹介します。
最も見えにくいのは自分自身である、ということは、自分を他者のほうから、見る術をみがく必要がある、だからまた、自分がほんとうは、何も知らないということを知っている人が、いちばん賢いということになる・・・
まさに、「メタ認知」のことですね!
最も見えにくいのは自分自身である、ということは、自分を他者のほうから、見る術をみがく必要がある、だからまた、自分がほんとうは、何も知らないということを知っている人が、いちばん賢いということになる・・・
まさに、「メタ認知」のことですね!
さいごに
なぜ、クリティカルシンキング が必要なのか?
なぜ、正しく 推論 することが大切なのか?
心理学で何を学ぶのか?
大学で何を学ぶのか?
それは
人間は「人」の「間」と書きますが
この「間」をつなぐために
この「間」を豊かにするために
そのために、
考ること、学ぶことを、続ける、
ということかもしれません。
今日はみなさんと一緒に
楽しい時間を過ごさせていただきました。
ありがとうございました。
なぜ、正しく 推論 することが大切なのか?
心理学で何を学ぶのか?
大学で何を学ぶのか?
それは
人間は「人」の「間」と書きますが
この「間」をつなぐために
この「間」を豊かにするために
そのために、
考ること、学ぶことを、続ける、
ということかもしれません。
今日はみなさんと一緒に
楽しい時間を過ごさせていただきました。
ありがとうございました。