地域連携・社会貢献活動

公開講座・講演会

地域で活躍する女性たち/生活情報学科公開講座を開催

19.02.19

 1/26(土)に本学で、公開講座「女性のポテンシャルで叶える六次産業化と地域づくり」が開催されました。六次産業化とは、農業を生産(1次産業)だけでなく、加工(2次産業)、販売・サービス(3次産業)まで一体化した産業として捉え、農業の可能性を広げようとする動きで、地域資源を活用した新規事業の創出は、女性活躍にかかっていると言っても過言ではありません。生活情報学科の大友由紀子教授をコーディネーターに、講師には山梨県甲州市勝沼町から、篠原雪江氏(シニアワインエキスパート)、三森靜江氏(元勝沼町男女共同参画プラン推進委員長)、大島節子氏(山梨県甲州市農業委員)、三森由美子氏(Katsunuma縁側茶房店主)、小出順子氏(まち案内&カフェつぐら舎代表)の5名をお招きし、それぞれが自身のキャリアと地域活動に関するお話を繰り広げました。

 

 0126公開講座登壇者   0126公開講座全景

   左から:小出氏、三森由美子氏、大島氏、          会場の様子(9417教室)

   三森靜江氏、篠原氏 

 

 

 勝沼町では、地域住民が運営する「かつぬま朝市」が毎月第一日曜に開かれており、16年目を迎えた今日では200店舗以上が出店する賑わいを見せています。そこで手作りコンニャクを販売しているのが、篠原氏が代表を務める女性グループ「あいあいクラブ」で、2003年の朝市開設をきっかけに三森靜江氏や大島氏らと6名で結成しました。当時、山梨県生活改良普及員だった大島氏の指導の下、地域に資源があり、食品衛生法で加工施設の許認可を必要としない食品としてコンニャクに辿り着き、加工技術の統一を研究して商品化に漕ぎつけました。活動の主旨は仲間づくりと地域貢献であることから、その収益は募金や駅前の美化活動にあてています。そもそも、篠原氏も大島氏も、また朝市の発案者も、三森靜江氏が委員長を務める「かつぬまヒューマンプラン」(=勝沼町男女共同参画推進計画)推進委員会の仲間でした。

 三森靜江氏は、ご夫婦で公立小中学校の教諭をされていましたが、当時の山梨県の教育界には、夫が管理職になる時には妻は退職する習慣がありました。53歳で30年間の教員生活にピリオドを打った後、1997年の「やまなし女性いきいきアドバイザー」就任から2004年までの8年間、勝沼町の男女共同参画推進を先導する立場にありました。1999年の「男女共同参画基本法」を受けて全国の自治体で推進計画を立てることになりましたが、勝沼町では住民の手で町民意識調査を実施し、「地域」、「家庭」、「労働」、「教育」の4つのステージでジェンダーを拾い出し、2002年3月に「かつぬまヒューマンプラン」を制定しました。さらには、男女共同参画をテーマにしたオリジナル脚本の寸劇を上演したり、非農家も含めて家族内のルールを考える家族経営協定の締結に取り組んだりして、プランの推進に努めました。2005年11月の市町村合併により勝沼町は甲州市に入りましたが、「かつぬまヒューマンプラン」の成果は、次世代にも引き継がれています。

 篠原氏の場合も、ご夫婦で県庁に勤務されていましたが、やはり夫が管理職になると妻は退職しなければならない習慣から45歳で退職し、5年間の民間企業勤務を経て1994年に地域の簡易郵便局を再建し、60歳までの10年間、局長を務めました。朝市が始まった2003年頃、たまたまラジオでワインセミナーという言葉を聞き、ワインを広めるべく、60歳から猛勉強して61歳で日本ソムリエ協会認定「ワインエキスパート」を取得しました。66歳で上級資格の「シニアワインエキスパート」を取得し、ワイン検定認定講師や国際的なワインコンクールの審査員も務めています。2006年4月から始めた朝市のワインセミナーは、2018年11月で100回の区切りを迎えました。13年間の受講者は1,673名を数え、仲間づくりの輪が広がりました。

 

 「あいあいクラブ」のメンバーよりも若い世代にあたる三森由美子氏は、2010年12月公布「六次産業化・地産地消法」による制度を利用して、2017年9月に「Katsunuma縁側茶房」を起業しました。ご主人は公務員で、「農業はしなくていいから、ご飯だけつくってね」というような話で、東京の出版社を辞めてぶどう農家に嫁いだものの、義父母が高齢になり、気が付いたら「働けるのは自分しかいない」状況になっていたそうです。ぶどうの仕事には手数が必要で、お手伝いの方たちにお茶出しをするのに、義母は手づくりにこだわるタイプだったそうで、何十年と見よう見まねで学んできた経験を活かし、地元の農産物や規格外の果物を有効利用する起業に至ったそうです。進学で東京に出ている子どもたちが帰って来たくなるような我が家であり、勝沼であるようにとの願いを込めて、築150年になる古民家の縁側を使って土日祝日限定のカフェを経営し、自家製のジャムやぶどうジュースも販売しています。

 まち案内・カフェ・雑貨販売の「つぐら舎」を経営する小出氏は甲州市塩山に生まれ、学生時代に県外に出てカフェでアルバイトをするうちに、故郷でカフェを開く夢を持ちました。いわゆる団塊ジュニアで、景気がよくない時代を過ごしたため、なかなか夢は実現しませんでしたが、結婚後、電車で1時間半かけて代々木の服部栄養専門学校に通いました。その後、甲州市観光案内所、甲州市役所政策秘書課勤務を経て、2011年10月に地元の魅力を伝える「まち案内」をオープンし、続いて2012年3月にカフェをオープンしました。公開講座では、甲州市役所と山梨県立大学の学生さんとが共同制作したフリーペーパー『甲州らいふ』を配布して、「まち案内」をしてくださいました。「つぐら舎」がある古民家は、もともとNPO法人勝沼文化研究所が事務所として使っていたところで、小出氏はNPO法人と町を散策する「勝沼フットパスの会」の事務局も兼ねています。「つぐら舎」の裏手には、ぶどう棚でできたトンネルがあり、そこを利用して2ヵ月に一度「つぐら市」というこだわりを求めた小さなマーケットを運営しており、また、「つぐら舎」では常時雇用も入れていて、地域経済にも貢献されています。

 

 以上の活動紹介と合わせて、全国的な農村女性起業の動向が示され、著書『成功する農村女性起業』(家の光協会、2001年)がある人間福祉学科の宮城道子教授から解説がありました。「女性起業」という名前が付いたことでビジネスとして見えるようになって数が増え、近年はグループ経営よりも個人経営が増えているけれども、制度上は個人事業であっても実際にはコミュニティ・ビジネスであり、NPOの先駆けではないか、とコメントがありました。

 フロアの受講者からも、東村山市のまちづくりのNPOに参加して小物雑貨のマーケットに取り組んでいるという声や、都内信用金庫職員からは、和光市産の根菜類を使ったピクルスや生鮮野菜を、百貨店やターミナル駅で販売するためのお手伝いをしているという声があり、情報交換になりました。大島氏に、家族経営協定について熱心に質問される受講者もありました。

 最後には、「かつぬまヒューマンプラン」策定委員会顧問を務めた山梨県立大学の堤マサエ名誉教授からフロアの受講学生に向けて、「人生には転換期があって、チャンスをどう生かすかは、チャレンジすること。たとえ失敗しても、諦めない、焦らない。そして、自分を甘やかさない。そういう自分づくりに、この公開講座がきっと役立つと思います」と、エールが送られました。

 

 当日は、勝沼町の朝市や古民家カフェで限定販売している「お刺身こんにゃく」「淡竹の水煮」「ぶどうジュース」「キウイのコンフィチュール」等の即売も実施。試食した方からは「美味しい!」の声があがり、完売品も出るなど盛況な様子でした。

 

0126加工品販売風景    0126こんにゃく試食品

     加工食品の特設販売ブース         「あいあいクラブ」のお刺身こんにゃく試食品

 

 

※本講座はJSPS科研費16K00762の助成を受けたものです。

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